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6 Stücke   Op.35
6つの合唱曲

詩: シェーンベルク,アルノルト (Arnold Schonberg,1874-1951) オーストリア

曲: シェーンベルク,アルノルト (Arnold Schonberg,1874-1951) オーストリア ドイツ語


1 Hemmung
1 抑圧

Ist ihnen die Sprache versagt?
Oder fühlen sie es nicht?
Haben sie nichts zu sagen?

Aber sie reden doch flüssiger,
je weniger ein Gedanke sie hemmt!
Wie schwer ist es,einen Gedanken zu sagen!

Und sie reden doch so flüssig,
wenn sie eine Absicht haben!
Wie oft muß man da staunen!

彼らにはこの言語は通用しないのか?
それとも彼らは何も感じないのか?
言うべきことを何も持っていないのか?

だが彼らは流暢に話をする
思考が邪魔をしないときには!
何と難しいのだ ひとつの考えを語ることは!

そして彼らはとても雄弁に話をする
何か企てを持っているときには!
何度 人はそれに驚かされることか!

2 Das Gesetz
2 法則

Wenns so kommt,wie man es gewöhnt ist,
ists in Ordnung: das kann man verstehn.
Kommt es aber anders,ist es ein Wunder.

Jedoch bedenke nur:
daß es immer gleich kommt,
das ist doch das Wunder,
das dir unbegreiflich scheinen sollte:
daß es ein Gesetz gibt,
dem die Dinge so gehorchen,
wie du deinem Herrn,
das den Dingen so gebietet,
wie dir dein Herr:
Dieses solltest du als Wunder erkennen!
Daß einer sich auflehnt
ist eine banale Selbstverständlichkeit.

もしも物事が進むのなら 人が知っている通りに
それは問題ないのだ 誰でも理解できる通り
だが違った展開になると それは奇跡となる

だが考えて見よ
常に同じように物事が運ぶこと
それこそが奇跡ではないのか
お前たちにはとても考えられない奇跡では
そう ひとつの法則があるのだ
物事がみなそれに従っている
ちょうどお前が主に従っているように
そして物事に命令している
まるでお前に主が命じているように
お前はこのことこそを奇跡として認識すべきなのだ!
そのことに対しひとりは必ず反逆するが
そんなのはもちろん些細な問題である

3 Ausdrucksweise
3 表現手法

Aus uns,im Masseninstinkt
spricht für einen Gott,
für andere der Urzustand.

Als Kulturvorbild gelten wir diesen,
abschreckend nennen uns jene.

Was wir wirklich sind,
wir wissens so wenig,wie,was jeder einzelne ist.
Sind wir beisammen,fühlt jeder nur jeder,
nicht mehr sich.
Sind wir getrennt,handelt jeder wie der andere
und dennoch wie er selbst.

Lob oder Tadel lässt uns alle
und jeden einzelnen kalt.
Aber wenn wir schlagen,
dann schlagen alle,wie Einer.

われらの中より 集団の本能において
語るのだ 神として
あるいは他者として 原初の状態が

文化の規範とわれらはそれを見做し
威圧するようにそう呼んでいるのだ

われらが実際に何者であるのか
われらはほんの僅かしか知らない 各々の個体がどのようであるかは
一緒にいれば 他人のことなどもはや もはや
感じることはないし
別れていれば 各々をまるで他人のように扱いながら
なおもそいつを自分自身のように考えている

賞賛したり貶したりして われらすべてや
各々の人間を凍りつかせる
だが我々が殴り合う時は
皆で殴り合うのだ まるで唯一者のように

4 Glück
4 幸福

Glück ist die Fähigkeit,
es noch zu wünschen,
es noch nicht genossen zu haben,
es noch winken zu sehen:
solange es sich versagt,ist es Glück.
Oder: wenn es entschwinden könnte,
wenn man es nicht erwartet,
wenn man es nicht verdient:
solange man es noch hat,ist es Glück.
Oder: wenn mans nicht benennen kann,
nicht weiß,worin es besteht,
nicht glaubt ,daß andere es kennen:
solange man es nicht begreift,ist es Glück.

幸福とはこんな能力のことだ
いまだになおも願い続け
まだ経験したこともなく
それを見ようと試みても
それがうまく行かない それが幸福なのだ
あるいは それが消えうせる可能性があったり
お前にはもう期待できないものであったり
お前にはもはや値しないものであったりするものを
なおも持っている それが幸福なのだ
あるいは 人がそれをそう呼ばなくなり
それがどこにあるか分からなくなり
他の人たちがそれと知っているとも思えないが
それでも気付かずにいる それこそが幸福なのだ

5 Landsknechte
5 傭兵たち

Einmal muß man sterben,
aber wer denkt daran?
Und wie ist das: Sterben?
Ach was!
Leben weiß man in jedem Augenblick.
Ebensolang: aber es geht weiter.
Tapp,tapp,hopp,hopp !
Auf die Weide!
Oh,heute regnets; wenig Gras --- kein gutes ---.
Herrlich: hier bin ich allein! Der beste Platz!
Kein andrer findet her. Eine fette
Weide für alle.
Vertragt euch: es ist genug für jeden!
Weg! Die Weiber sind mein!
Lauf,oder ich spieß dich auf! Stirb!
So,hier bin ich Herr!
Für die Jungen ist gesorgt.!
Ach was,Junge! Man lebt jetzt eben!
Oho,es riecht nach Blut?
Nach unserm Blut und Fleisch.
Also dorthin gehts?
Werden wir jetzt schon geschlachtet?
Man sollte fliehen: Man ist gelähmt!
Was könnte es nützen?
Landsknechtsschicksal!

一度は死なねばならぬのだ
だが誰がそれを知ってる?
それはどういうことなのだ 死ぬとは?
ああ 何だって!
生きることなら 人はあらゆる瞬間に知っている
ずっと長いこと だがそれは更に続いてゆく
タップ、タップ、ホップ、ホップ!
牧草地の上で!
おお 今日は雨降りだ 僅かの草---まるで駄目だ---。
凄いぜ:ここで俺は一人だぞ!最高の場所だ!
誰もここにはいない 肥沃な
皆のための牧草地だ
仲良くやろうぜ ここは皆にとって十分だ!
いいぞ!女たちは俺のものだ!
走れ さもなきゃお前に唾を吐きかけてやる!死ね!
ここでは俺が御主人さまだ!
野郎ども 世話になるぞ!
ああ 畜生め!だれか生きてる!
オホゥ 血の匂いだな?
俺たちの血と肉の後をつけて
それは漂ってくるのか?
俺たちはもう虐殺される運命なのか?
逃げねばならんのだ:麻痺しているのだ!
お前に何の御利益があるのだ?
傭兵の運命に!

6 Verbundenheit
6 団結

Man hilft zur Welt dir kommen,
Sei gesegnet!
man gräbt ein Grab für dich,
Ruhe sanft!
man flickt die Wunden dir im Spital,
Gute Bessrung!
löscht dein Haus,zieht dich aus dem Wasser
Fürchte nichts,
du hast selbst doch auch mit andern Mitleid!
Hilfe naht,du bist nicht allein!

人はお前がこの世に生まれ出ずるのを手助けするのだ
祝福あれ!
人はお前のために墓穴を掘るのだ
安らかに眠れ!
お前の傷は病院で手当てされる
早く良くなれよ!
もしお前の家が焼けたなら お前を水から引き揚げてくれる
怖がるんじゃないぞ!
お前自身もまた他人に慈悲を感じるのだ
助けはすぐそこだ お前はひとりぼっちじゃない!


作品35は男声合唱によるアカペラの合唱曲、詞は作曲者自身の作です。この頃のシェーンベルクはこんな感じで自作の詩を使った声楽作品をたくさん書いています。人生について、芸術について、政治について、社会について...意気込みは非常に良く感じ取れるのですが、そのどれもが詩が難解なのは勘弁してほしい感じ。深いメッセージをできるだけ読み取るように努力して日本語に訳してはみましたが意味が良く取れなかったものも多く、意味上明の訳語を連ねることになってしまっています。ご容赦のほど。

音楽の方も、かなり変化を付けようという工夫をしてはいるのですが(第5曲目などはダイナミックで面白い)、やはり男声だけのアカペラというのは少々彩りに乏しく、聴いていて退屈してしまうのは避けられないところです。その上演奏が難しいとくれば、この合唱曲集、あまり歌われることが多くないのも仕方のないことなのかもしれません。

( 2014.03.08 藤井宏行 )