Drei Gesänge aus Lord Byrons Hebräischen Gesängen Op.95 |
バイロンのヘブライ風歌曲よりの三つの歌 |
1 Die Tochter Jephtas
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1 イェフタの娘
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Von der Tochter verlanget den Tod, Dein Gelübde vom Feind uns befreit, Durchbohr' mich,ich stehe bereit! Und die Stimme der Klagen ist stumm, Und mein Werk auf den Bergen ist um! Wird die Hand,die ich liebe,mich weihn, Kann der Tod ja nicht schmerzlich mir sein. Und das schwör ich dir treulich und gut, Daß so rein ist mein kindliches Blut, Als der Segen,den strömend es fleht, Als hienieden mein letztes Gebet! Ob die Jungfrau Jerusalems klagt, Sei der Richter,der Held nicht verzagt! Der Triumph kam durch mich euch herbei, Und mein Vater,die Heimat sind frei! Wenn das Blut,das du gabst,ist entwallt, Die du liebtest,die Stimme verhallt, Denk' meiner,die Ruhm dir erwarb, Und vergiß nicht,daß lächelnd ich starb. |
この娘に死を求めているのです 父上の誓いが敵より私たちを救ったのですから 私を刺してください 私は覚悟はできております 嘆きの声は沈黙しました 山の上での私の行も終わりました 愛するお方の手が私を捧げるのです この死は決して私には苦しくはないでしょう 私は父上に誓いましょう 誠実に 善良に とても清らかであることを 私の処女の血は 神のお恵みのように それは流れ出すことでしょう この世での私の最後の祈りとして! もしもエルサレムの乙女たちが嘆いたとしても 審判官として 英雄として 怯んだりしないでください! 勝利は私を通じてもたらされるのです そしてお父上 故郷は救われるのです この血 父上より頂いたものがほとばしり出て 父上の愛した この者の声が止むとき 私のことを思ってください 栄誉を父上にもたらした者のことを そして忘れないでください ほほえみながら私は死んで行ったのだと |
2 An den Mond
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2 月に寄せて
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Dein tränenvoller Strahl erzittert fern, Du offenbarst die Nacht,die dir nicht weicht - O wie du ganz des Glücks Erinn'rung gleichst! So glänzt auch längstvergangner Tage Licht, Es scheint,doch wärmt sein schwaches Leuchten nicht, Der Gram sieht wohl des Sterns Gestalt, Scharf,aber fern,so klar,doch ach! wie kalt! |
お前の涙のあふれる光が遠くで震えている お前は夜を開く お前にはどうしようもない夜を おお 何とお前は幸福の思い出に似ていることか ずっと昔の 過ぎ去った日の光のごとく輝くが 輝けども しかし暖かくはないのだ 苦悩は星の姿をして見える はっきりと だがとても遠くに 澄んでいるがしかし ああ何と冷たく! |
3 Dem Helden
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3 英雄に
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Es preist des Volks Gesang Dich Hoher auf des Sieges Bahn, Dein Schwert im Feindesdrang, Die Taten all,die du getan, Jauchzt dir der Freiheit Dank! Und ob du fielst,so lang wir frei, Sollst du den Tod nicht sehn, Dein Blut,so edel,rein und treu, Darf nicht zur Erde gehn, In unsern Adern fließt es neu, Dein Geist mög in uns when! Dein Name sei dem Heer Signal, Rüstet's zum Kampfe sich, Und Jungfraun künden's im Choral, Daß unser Held erblich! Es netze keine Trän dein Mal, Wir klagen nicht um dich! |
民衆の歌声は讃える 御身を 勝利の道の上高く 敵を貫く汝の剣を 御身の為したるあらゆる偉業を 自由の民は歓呼して感謝する そしてもし御身が倒れるとも われらが自由である限り 御身は死を目の当たりにすることはない 御身の血はとても気高く 清く 誠実にして 大地に流れることなく われらの血管の中を新たに流れるのだ 御身の御魂もわれらのうちに漂うであろう! 御身の名は突撃の合図となろう 戦に備えて準備された合図に 乙女らは声を合わせて告げるのだ われらが英雄は倒れたり!と 御身の時に涙を絡めるまじ われらは御身のことで嘆きはしない! |
シューマンの第2の歌の年ともいえる1849年の作品、イギリスの詩人バイロンが1815年に書いた「ヘブライのメロディHebrew Melodies」から、その7、24、11番目の詩を取ったものです。ドイツ語訳はシューマンにもなじみの深いカール・ユリウス・ケルナ―です。
バイロンの詩は最初から歌の詩として書かれたものですので(Isaac Nathan(1790-1864)という人の委嘱を受けて書かれ、彼によって連作歌曲となっているようです 当時はかなりの評判になったようですが今は聴くこともかないません)、けっこう歌曲には取り上げられている題材です。このシューマンの第2曲「月に寄せて」などは、ドイツ語の訳詞者はみな違いますが、レーヴェ、メンデルスゾーン、ヴォルフなどが曲をつけており、聴き比べができます。シューマンの作品もこの憂いに満ちた静かな曲がもっとも好まれ、良く取り上げられるようです。
第1曲は旧約聖書の士師記第11章より。イスラエルの勇者イェフタはアンモン人との戦いに際し、「勝利すれば凱旋したときに最初に会う人間を生け贄に捧げる」と神に誓い、最初に会った自らの娘を差し出さねばならなくなります。ここでは死の運命を知ったのちの2カ月の山籠りの後、まさにこれから死に赴かんとしている時の娘の覚悟が歌われます。叩きつけるピアノ伴奏に乗ってドラマティックな歌が歌われます。ただメロディに訴求力が足らないのがこの曲をあまりポピュラーにしない理由でしょうか。中間部分の盛り上がりなどはなかなか聴かせるものを持っているのですが。
第2曲はひたすら静謐に、ささやくように歌われます。
微妙な転調を繰り返しながら明るくなったり暗くなったりするメロディが不思議な情感を醸し出します。
最後の曲は堂々と華やかに歌われます。個人的にはこの3曲の中で一番好きなのですが、音楽の深みはないかも知れません。3曲の中で一番取り上げられることも少ないです。
( 2012.10.27 藤井宏行 )