Gedichte der Konigin Maria Stuart Op.135 |
メアリー=スチュワート女王の詩による5つの詩 |
1 Abschied von Frankreich
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1 フランスへの別れのことば
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Ade,mein fröhlich Frankenland, Wo ich die liebste Heimath fand, Du meiner Kindheit Pflegerin. Ade,du Land,du schöne Zeit -- Mich trennt das Boot vom Glück so weit! Doch trägt's die Hälfte nur von mir: Ein Theil für immer bleibet dein, Mein fröhlich Land,der sage dir, Des Andern eingedenk zu sein! -- |
さようなら、幸せのフランスよ。 そこに子供時代、 私が過ごした愛する家があった。 さようなら、ふるさと、幸せな日々。 私は船に乗って幸せから遠いところへ運ばれるのよ! でも 連れて行かれるのは私の半身だけ 残りの半身は永遠におまえと一緒なの、 私の幸せの国よ。 もう1人の私をも、忘れぬようお願いします。 |
2 Nach der Geburt ihres Sohnes
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2 息子の誕生に
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Beschütze die Geburt des hier Gebor'nen. Und sei's dein Will',lass sein Geschlecht zugleich Lang herrschen noch in diesem Königreich. Und alles,was geschieht in seinem Namen, Sei dir zu Ruhm und Preis und Ehre,Amen. |
この新しい命の誕生をお守り下さい。 そして主の御意思なら、この子の一門による 王国の支配が長く続きますことを そしてこの子の名でなされることは全て 主の栄光と賛美と崇拝のためです。アーメン |
3 An die Konigin Elisabeth
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3 エリザベス女王に
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Hält ewig mir den Sinn gefangen, Sodaß der Furcht und Hoffnung Stimmen klangen, Als ich die Stunden ruhelos gezählt. Und wenn mein Herz dieß Blatt zum Boten wählt, Und kündet,Euch zu sehen,mein Verlangen, Dann,theure Schwester,fasst mich neues Bangen, Weil ihm die Macht,es zu beweisen fehlt. Ich seh den Kahn,im Hafen fast geborgen, Vom Sturm und Kampf der Wogen festgehalten, Des Himmels heit'res Antlitz nachtumgraut. So bin auch ich bewegt von Furcht und Sorgen, Vor Euch nicht,Schwester! Doch des Schicksals Walten Zerreißt das Segel oft,dem wir vertraut. |
それがいつまでも心を捕らえて放さない。 落ち着かず時間の経つことだけを考えていた時、 不安と希望の声が聞こえていたように。 あなたにただひたすらお会いしたいと、 この紙に書いてお伝えする決心をした今も、 新しい不安が私を襲って来ました。 親愛なる姉上よ、そのことを証明する力はありませんが。 よくわかっています、私たちの信頼がゆるぎないもので、 押し寄せる嵐や波に負けない事を。 でも澄み切って広がる空は夜には暗くなる。 だから姉上よ、あなたの前に立てば こんな恐れや不安に悩まされることはないと。しかし、運命は お互いの信頼を切り裂く事をするのです。 |
4 Abschied von der Welt
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4 この世へのわかれ
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Mein Herz erstarb für irdisches Begehren, Nur Leiden soll mein Schatten nicht entbehren, Mir blieb allein die Todesfreudigkeit. Ihr,Feinde,lasst von eurem Neid: Mein Herz ist abgewandt der Hoheit Ehren, Des Schmerzes Uebermaß wird mich verzehren, Bald geht mit mir zu Grabe Haß und Streit. Ihr Freunde,die ihr mein gedenkt in Liebe, Erwägt und glaubt,daß ohne Kraft und Glück Kein gutes Werk mir zu vollenden bliebe. So wünscht mir bess're Tage nicht zurück, Und weil ich schwer gestrafet werd hienieden, Erfleht mir meinen Theil am ew'gen Frieden. |
もうこの世での望みはない。 悲しみだけが私の影です、 死の喜びだけが私に残されたもの。 私を憎まないで、敵の人たち、 君主としての誇りなどもうないのです。 これ以上の苦しみにあえば私は壊れてしまうでしょう。 憎しみや争いは私と一緒に埋めてしまえばよい。 私を愛してくれる友よ、 もう力にも運にも見放されているので、お役に立つ事などは出来ない。 だから昔のことのお礼を期待しないで。 そして、この世でこれほど 残酷な罰を受けたのだから、 せめていつまでも続く安らぎをもらえるよう、お願いして下さい。 |
5 Gebet
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5 祈り
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ich hoffe auf Dich! O Jesu,Geliebter, Nun rette Du mich! Im harten Gefängniß, In schlimmer Bedrängniß Ersehne ich Dich; In Klagen,Dir klagend, Im Staube verzagend, Erhör',ich beschwöre, Und rette Du mich! |
あなたを信じます! おお愛するイエスよ、 今私をお救い下さい! この耐え難い牢屋の中で、 このつらい苦しみの中で、 主をお待ちしております。 嘆きの中で主を求め、 埃にまみれ、すっかり弱っております。 主よお慈悲ですから、お聞き下さい、 そして主よ私をお救い下さい! |
これはシューマンの歌曲の中では知られていない曲であり、私は、ナタリー=ス
トゥッツマンの素晴らしい歌唱の録音しか聴いたことはありません(ERATOの彼
女最初のシューマンの歌曲の録音。ピアニストはミシェル=ダルベルト。)最近
若い歌手で歌う人が増えてきたようです。(今度白井光子の録音が出るので是非
聴いてみたい)
このシェイクスピアの同時代人であるメアリー女王の悲痛な辞世の詩につけた歌
曲は、シューマンの最後の歌曲の一つであり、その中で重要な曲と考えます。彼
がその事を予感していたかは別にして、例えばブラームスの「4つの厳粛な歌」
に相当するものだと思います。30代の「歌の年」に書かれた歌曲と比べ大変シン
プルな曲になっています。(CDの解説では、クープランやシャルパンティエの
ルソン・テネーブルのようだと書いてあるけれど?)こういう歌曲への好みは文
学的な趣味と思いますが、私はそれで好きな曲です。
( 1998.08.03 稲傘武雄 )