Cinq Mélodies Populaires Grecques M.A 9 |
5つのギリシャ民謡(カルヴォコレッシ仏訳) |
1 Chanson de la mariée
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1 花嫁の目覚め
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Ouvre au matin tes ailes. Trois grains de beauté,mon coeur en est brûlé! Vois le ruban d'or que je t'apporte, Pour le nouer autour de tes cheveux. Si tu veux,ma belle,viens nous marier! Dans nos deux familles,tous sont alliés! |
朝に向かって君の羽を広げておくれ 3つの綺麗なそのほくろに、僕の心は燃え上がる この手に持ってる金色のリボンをご覧 君の髪の毛に結ぶためのものだ もしも君が望むのならば、かわいい人よ、結婚しよう 僕等ふたりの親族は、皆ひとつに結ばれるのだ |
2 Là-bas,vers l'église
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2 向こうの教会へ
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Vers l'église Ayio Sidéro, L'église,ô Vierge sainte, L'église Ayio Costanndino, Se sont réunis, Rassemblés en nombre infini, Du monde,ô Vierge sainte, Du monde tous les plus braves! |
アイヨ・シデロの教会のそばへ 教会へ、おお、聖母さま、 聖コンスタンディーノの教会へ 集まってきました 数え切れないほどの人たちが この世で、おお聖母さま、 この世で最も実直な者たちが |
3 Quel galant m'est comparable
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3 私と比べられる男前はだれなんだ?
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D'entre ceux qu'on voit passer? Dis,dame Vassiliki? Vois,pendus à ma ceinture, pistolets et sabre aigu... Et c'est toi que j'aime! |
街を通り過ぎていく男たちの中で? どうなんだい、ヴァシリキの奥さんよ? 見てくれ、俺のベルトにぶら下げた ピストルと鋭いサーベルを・・・ そして、俺はあんたに惚れたのさ! |
4 Chanson des cueilleuses de lentisques
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4 乳香を集める女たちの歌
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Joie de mon coeur, Trésor qui m'est si cher; Joie de l'âme et du coeur, Toi que j'aime ardemment, Tu es plus beau qu'un ange. O lorsque tu parais, Ange si doux Devant nos yeux, Comme un bel ange blond, Sous le clair soleil, Hélas! tous nos pauvres coeurs soupirent! |
ああ、何て幸せなの とっても大事な私の宝物 心も、胸もドキドキするわ 私のとっても好きなあの人 天使よりずっとハンサムなあの人 ああ、あなたが目の前に現れると とても優しい天使が 私たちの目の前に 美しいブロンドの天使に見える 明るい太陽の光の下で ああ!私たちはただ溜息をつくだけ! |
5 Tout gai!
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5 何と楽しい!
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Belle jambe,tireli,qui danse; Belle jambe,la vaisselle danse, Tra la la la la... |
美しい足が、ティレリ、ダンスをしてる 美しい足が踊れば、食器までも踊る。 トラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ・・・ |
アルカイックな美しさに満ちたラヴェルの音楽の一面を味わうのにこれほどピッタリの作品もそうはないでしょう。5曲の動と静の交互に出てくるコントラストが見事です。
「花嫁の目覚め《の浮き立つようなリズムと中東風のエキゾチシズム
「向こうの教会へ《の教会音楽のような静謐さ
「私と比べられる男前はだれなんだ?《では一転してギリシャ風の陽気な踊りのメロディがとても印象的
「乳香を集める女たちの歌《は手の届かない憧れの若者のことを想って娘たちが悲しげに歌う上思議な味わいの歌
そして最後の「何と楽しい!《はひたすら威勢よく歌われます。
もともとこれらの曲は、ギリシャのキオス島の民謡を芸術学校の教授カルヴォコレッシが講義で使うために自らフランス語訳し、ラヴェルに依頼してピアノ伴奏を付けてもらったものだそうです(1906)。
その点ではエキゾチシズムを漂わせながらも、フランスの歌曲という感じの強い作品ではないかと思いますが、もとのギリシャ語の詩に乗せて歌っているマリア・ゾウヴェスの盤(VAI)を聴くと、多少はオリジナルの民謡の雰囲気が感じられて面白いかも。
「乳香を集める女たちの歌《や「何と楽しい!《などピアノのリズムの微妙な違いもあって、別の曲のようにも聴こえます。
正統派のフランス語バージョンではスゼーやホルツマイヤーなどの男声陣と(フィッシャーディースカウの録音!もあるようです)、ロス・アンへレスやヘンドリックスのような女声陣との競合が楽しめますが、個人的にはこの曲は女声の方がしっくりきます。
ラヴェルの歌曲全集(EMI)にあるマディ・メスプレのソプラノが、3・5曲目では少々迫力上足なものの、他の曲で見せてくれる繊細な表情が最高で私の一番のお気に入りです。
ドミニク・ヴィスのカウンターテナーの録音(KING)も、その独特の浮遊感が何とも言えない雰囲気を醸し出していて面白いのではないかと。
多彩な表情を楽しめるのがラヴェル歌曲の魅力でしょう。
( 2004.08.10 藤井宏行 )