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Five Little Songs  
5つの小さな歌

詩: スティーヴンソン (Robert Louis Balfour Stevenson,1850-1894) イギリス

曲: アーン,レイナルド (Reynald Hahn,1875-1947) フランス 英語


1 The swing
1 ぶらんこ

How do you like to go up in a swing,
Up in the air so blue?
Oh,I do think it the pleasantest thing
Ever a child can do!

Up in the air and over the wall,
Till I can see so wide,
Rivers and trees and cattle and all
Over the countryside -

Till I look down on the garden green,
Down on the roof so brown -
Up in the air I go flying again,
Up in the air and down!

ぶらんこに乗るってどんな気分
こんなに青い空に昇っていくのって?
うん、一番楽しい遊びさ
子供がする中では一番ね

空高くそして塀を越えて
とっても遠くが見えるところまで昇るんだ
川も 森も 牛もみんな
村中すべてが見渡せるところまでね

緑のお庭の見えるところまで
茶色の屋根の見えるところまで
大空の中 また昇る
大空の中を昇って 舞い降りるんだ!

2 Windy nights
2 風の吹く夜

Whenever the moon and the stars are set,
Whenever the wind is high,
All night long in the dark and wet,
A man goes riding by.
Late in the night when the fires are out,
Why does he gallop and gallop about?

Whenever the trees are crying aloud,
And ships are tossed at sea,
By,on the highway,low and loud,
By at the gallop goes he.
By at the gallop he goes,and then
By he comes back at the gallop again.

月も星たちも沈んでるときはいつも
風が激しく吹いているときはいつも
一晩中 暗く湿った中を
ひとりの男が馬を駆る
夜は遅く 灯りも消えている
なんだって彼は駆けて駆けるのか?

木々がざわめくときはいつも
そして船たちが海で揺らぐときに
通りでは、低くそして騒がしく
駆け足で彼がゆくのだ
駆け足で彼はゆき、そして
駆け足でまた彼は戻ってくる

3 My ship and I
3 ぼくの船とぼく

O it's I that am the captain of a tidy little ship
Of a ship that goes a sailing on the pond.
And my ship it keeps a turning all around and all about,
But when I'm a little older I shall find the secret out
How to send my vessel sailing on beyond.

For I mean to grow as little as the dolly on the helm
And the dolly I intend to come alive
And with him beside to help me it's a sailing I shall go,
It's a sailing on the water where the jolly breezes blow
And the vessel goes a divie divie dive.

O it's then you'll see me sailing through the rushes and the reeds
And you'll hear the water singing at the prow.
For beside the dolly sailor I'm to voyage and explore
To land upon the island where no dolly was before
And I'll fire the penny cannon on the bow!

そう ぼくだよ このちっちゃなお船の船長は
この池の上を走るお船の
そしてぼくの船は回り続けるんだ ぐるぐると
でもぼくがも少しおおきくなったら秘密がわかるんだろうな
どうやってぼくの船をもっと遠くに進められるかっていうことを

船のへさきに乗っている人形と同じくらいちっちゃくなって
それから人形に命を与えるんだ
そして彼といっしょに航海を続けよう
気持ちいいそよ風が吹いてくる水の上を
そして船は進む、進む、進むんだ

ねえ それから蘆や葦の間をぬっていくのが見えるだろ
それから水が船首のところで歌ってるのが聞こえるだろ
わきにいる人形の水夫のために ぼくは船で探検を続けよう
今まで人形は誰もいなかった島に上陸するために
そしてぼくは船首の上のちっちゃな大砲をぶっぱなすんだ

4 The stars
4 星たち

The lights from the parlour and kitchen shone out
Through the blinds and the windows and bars;
And high overhead and all moving about,
There were thousands of millions of stars.
There ne'er were such thousands of leaves on a tree,
Nor of people in church or the Park,
As the crowds of the stars that looked down upon me,
And that glittered and winked in the dark.

The Dog,and the Plough,and the Hunter,and all,
And the star of the sailor,and Mars,
These shown in the sky,and the pail by the wall
Would be half full of water and stars.
They saw me at last,and they chased me with cries,
And they soon had me packed into bed;
But the glory kept shining and bright in my eyes,
And the stars going round in my head.

居間やキッチンから明かりが漏れ出してくる
ブラインドや窓や格子のすきまから
そして頭上高く 周り中すべて
幾千万の星たちがある
こんなたくさんの数の葉は木には付いてないし
教会や公園にもこれほどの人々はいない
そんな星たちの集団は私を見下ろし
きらめき 暗闇からウインクする

おおいぬ座、北斗七星にオリオン座
そして北極星に火星
空に見えるこれらの星たち、そして壁のそばの桶は
水と星とで半分は一杯になるだろう
とうとう星たちはぼくを見つけて、叫びながらぼくを追いかけ
あっとう間にぼくをベッドの中に押し込んだ
だけどその輝きはぼくの目の中でまたたき続け
星たちはぼくの頭の中をぐるぐる回っている 

5 A good boy
5 真面目な少年

I woke before the morning,
I was happy all the day,
I never said an ugly word,
but smiled and stuck to play.

And now at last the sun
is going down behind the wood,
And I am very happy,
for I know that I've been good.

My bed is waiting cool and fresh,
with linen smooth and fair,
And I must off to sleep again,
and not forget my prayer.

I know that,till tomorrow
I shall see the sun arise,
No ugly dream shall fright my mind,
no ugly sight my eyes,

But slumber hold me tightly
till I waken in the dawn,
And hear the thrushes singing
in the lilacs round the lawn.

ぼくは夜明け前に目覚めて
一日中幸せだった
きたない言葉なんかぜんぜん使わなかったし
にこにこして遊ぶことに夢中だった

とうとうお日さまが
森の向こうに沈もうとしている
ぼくはとても幸せだ
ずっと良い子でいられたのだから

ぼくのベッドはすずしくさわやかにしつらえられてる
しわひとつないきれいなシーツでもって
ぼくはこれからまた眠らなくちゃ
だけどお祈りは忘れないようにね

わかってるさ、明日にはまた
お日さまが昇るのを見るんだから
こわい夢なんか心の中に浮かぶことはないし
こわいことなんか見たりはしないさ

しっかりと眠れるんだ
夜明けに目覚めるまでずっと
そしたらツグミが歌うのを聞くんだ
芝生のまわりのライラックの中の


ベネズエラの出身ではありますが、フランス人の作曲家以上にフランスっぽい歌曲を書いたレイナルド・アーンに英語の詩による歌曲があったというのはたいへんに意外なことでした。どういういきさつで書かれたものなのかは調べ切れませんでしたが、歌詞は「宝島《や「ジキルとハイド《で知られるイギリスの小説家&詩人のR.L.スチーブンソン(1850-1894)、彼の書いた子供のための詩集「子どもの詩の園(A Child's Garden of Verses 1885)《の中から選んだ5つの詩です。
音楽的には子供向けといった感じはせず、フランス歌曲をむりやり英語で歌っているといった感がなきにしもありませんが、それでも戦後のアメリカン・ミュージカルにつながるような音楽の色彩感が興味深いところではありました。

第1曲目の「ぶらんこ《は以前、イギリスの女性作曲家リザ・レーマンのものを取り上げたことがありますが、あれよりもずっとしっとりした感じ。お上品なブランコ遊びです。ピアノのアルペジオが揺れ動く感じをうまく表現しています。
第2曲目は幻想的な、少しホラーの入った詩ですがそれをうまくギャロップのリズムに乗せてユーモラスな音楽にしています。あまりフランス歌曲の雰囲気は出なくなってしまっていますが。むしろドイツ歌曲の味わいでしょうか。英語で歌われているのでミュージカルの音楽のようでもあります。
第3曲目は面白い詩ですね。子供の空想の世界が見事に表されています。メロディも美しくこの歌曲集の白眉ではないかと思います。
第4曲目も詩が見事です。これはフランス歌曲の王道をいくようなメロディですね。アップショーやヘンドリックスなどドビュッシーを得意とするアメリカのソプラノたちが歌ったら絶品になるのではないでしょうか。
第5曲だけは私は詩がちょっと気に食わないのですが、これも音楽は目の覚めるような美しさで聴かせてくれます。アイアランドやヴォーン=ウイリアムズといった典型的なイギリス歌曲にほんのりとフランス風の味付けをしたという感じがしてなかなか聴いていて心地よいです。


チャイコフスキーのフランス語歌曲があまり歌われないようにこのアーンの英語の歌もほとんど取り上げられることはなく、知られざる歌曲集となっている感がありますが、naiveレーベルでアルトのルミュー(Marie-Nicole Lemieux)が歌っている録音を見つけることができました。もうちょっとエレガントな方がこの歌曲集には似合っているような気もしましたが、しっとりとした歌い方で後半2曲などはなかなか良かったです。またアルトの声が第2曲もいい具合にはまっているように思えました。

スティーブンソンの詩集「子どもの詩の園《、以前もご紹介したことがありますが素敵な邦訳の本が出ています。
(よしだみどり 訳・絵 白石書店) クリスティーナ・ロセッティの素敵な童謡集同様、ぜひ音楽と一緒にお楽しみください。

( 2009.09.17 藤井宏行 )