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Deux Chansons de Melpomène  
メルポメーネの2つの歌

詩: アゲ (William Aguet,1892-1965) フランス

曲: イベール (Jacques Ibert,1890-1962) フランス フランス語


1 Mon bien aimé siffle si bien
1 私の恋人は口笛が上手

詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
私の恋人は口笛が上手
だから私の父さんもいつも信じてるの
それがクロウタドリの歌声だって
この素敵な季節に戻ってきた
 
これはほんとに役立つわ 春には
彼は真似するの カッコウを
そうやって私は恋人と会えるんだもの
父さんは思い込んでる間 私が縫いものしてると
 
秋には 私の独創的な芸術家さんは
カラスの鳴き真似をして
私の父さんの気をそらすの
私たちが見つかる心配のないように
 
冬は ああ!鳥がいないわ
とっても困ったこと 私たちのランデブーのためには
だったらこの際 恋人を
旦那にしちゃえばいいわね

娘さんたち いつでも
しっかりと 男を見つけるのよ
あなたをしっかりとエスコートして
決して危険にさらすことのないような

(著作権の関係で大意にとめています)
2 Je pensais épouser un fier àbras
2 私は思ってた 結婚するだろうと 威張りん坊と

詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
私は思ってた 結婚するだろうと 威張りん坊と
男爵アブラカダブラと
彼は私に大変な身分を与えてくれたでしょう
紋章で保証されている
それが!どうだっていうの?
 
優しい人よ 優しい人よ
ぜんぜん威張りん坊じゃないわ
彼が私の夫なの
優しい人 それが私の夫
本当に甘い家庭よ

たとえ彼の髭が青くても
私は言うわ 「素敵な彼 私の愛する人《と
彼の持つ癖はとっても謎
考えれば考えるほど
それが!どうだっていうの?

でも私には問題じゃない 
分かってるから 私を愛してるって
そして私が七十歳になっても
他の人は言うのかしら
酷い旦那だって?
勝手に言うがいいわ!どうだっていうの?

(詞は大意です)

サティのお洒落なシャンソン(「あなたが欲しい《とか)に、プーランクの持つ軽妙な快活さ、この両者をうまくミックスすると、このイベールの歌曲になるのかも知れません。
本当に初期の管弦楽組曲「寄港地《ばかりが取り上げられ(彼のスタイルではないような気が...しかもこの曲すら最近はあまり取り上げられない)、フランス近代の作曲家の中でも今ひとつメジャーになれないイベールですが、快活な管楽5重奏とかフルート協奏曲、そしてメンデルスゾーンの結婚行進曲をお洒落にアレンジしているディヴェルティメントと、フランスのエスプリで一杯の作品をいろいろ書いています。
歌曲では、バス歌手シャリアピンのために書かれた映画音楽の「ドンキホーテのシャンソン《のみが有吊で、あとはほとんど知られていないといっても良いですが、フランスのレーベルPMPから出ているイベールの歌曲集を聴いてすっかりハマってしまいました。
冒頭に書いたように、サティとプーランクの良いとこ取りをして作られたような作品群。強力な個性こそありませんが極上のシャンソンが聴けます。メーテルリンクを除いては、あまりなじみのない詩人の詩に付けており、ユーモラスな曲からしみじみした曲までけっこう多彩です。新しい響きを求める方には通俗的すぎて満足頂けないかも知れませんが、以前ご紹介したタイユフェール共々、無視され、忘れ去られてしまうにはあまりに勿体無い世界です。
この曲は、CDの冒頭を飾る2曲で、鳥の鳴き真似も入って楽しい1曲目と、メロメロに夫をノロケるリフレインがサティの「Je te Veux(あなたが欲しい)《を思わせる、どちらもユーモラスにお洒落な曲で、詩も全部ご紹介ができないのが惜しい、微笑ましいものです。
PMPレーベルのこの録音、清楚な声のソプラノ、ドロリアンの歌で収録されていますが、この声がイベールの作品の魅力を増しているともいえましょう。

( 2000.11.17 藤井宏行 )