Épigrammes de Clément Marot M.21 |
クレマン・マロのエピグラム |
1 D'Anne qui me jecta de la neige
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1 雪を投げつけたアンヌ
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Que je cuidoys froide certainement: Mais c'estoit feu,l'expérience en ay-je Car embrasé je fuz soubdainement Puisque le feu loge secretement Dedans la neige,où trouveray-je place Pour n'ardre point? Anne,ta seule grâce Estaindre peut le feu que je sens bien Non point par eau,par neige,ne par glace, Mais par sentir un feu pareil au mien. |
それはぼくは大変冷たいものと思ってた だがそれは火だった、かつてぼくがやけどしたことのある なぜって突然ぼくは熱く感じたのだから 火はひそかに隠れているのだろう 雪の中に、ならばぼくはどこに見つけたらいいのだろう 燃えてしまわない場所を? アンヌよ、きみのやさしさだけが この火を消せるのだと ぼくは良く分かっているよ それは水じゃない、雪じゃない、氷じゃないんだ ぼくと同じ火が燃えるのをきみも感じることによってなのさ |
2 D'Anne jouant de l'espinette
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2 スピネットを弾くアンヌ
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Jeune,en bon point,de la ligne des Dieux, Et que sa voix,ses doits et l'espinette Meinent ung bruyct doulx et melodieux, J'ay du plaisir,et d'oreilles et d'yeulx Plus que les sainctz en leur gloire immortelle Et autant qu'eulx je devien glorieux Dès que je pense estre ung peu ayme d'elle. |
若く、美しく、神々の姿をした容姿を そしてまた彼女の声が、指がそしてスピネットが 甘くメロディアスな音を響かせるとき ぼくは喜びを感じる、耳からも目からも 上滅の栄光に輝いている聖人たちよりも 同じくらいぼくは栄光に満ち溢れるのだ 彼女が少しでもぼくを愛していると思ったときには |
中世の雰囲気を醸し出す音楽においては、ラヴェルは天才的なものがあったのではないでしょうか。ただ昔の音楽を模倣するのではなくて、そこに鮮烈な近代の味付けをするので、どれを聴いても非常に上思議な味わいなのです。この16世紀の宮廷詩人、クレマン・マロの可愛らしい恋の詩に付けたこの2つの歌曲でもそれはそれは見事。
第1曲は静かに奏でるピアノの斬新な和音に時折はっとさせられます。古典の顔をしていながら。
第2曲ではリズミカルに流れる伴奏のメロディがことのほか印象的。スピネットの音楽を模しているのでしょう。
詩はもちろん500年近く前のフランス語ですのでかなり分からないところがあります。一部英訳などに頼りながら仕上げましたが、誤訳も多々あるかと思います。どうかご容赦を。
1899年の作曲ですが、同年にはこれも古典的なメロディの美しさでラヴェルの作品の中でもとりわけ愛されている「亡き王女のためのパヴァーヌ《が書かれています。
( 2007.11.23 藤井宏行 )