淡彩抄 |
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1 泡
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君はさりげなく透かして見ている 秋の日の恋は淡い すずかけの葉が散っている (詞は大意です) |
2 螢
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夏になれば涼しい風や水になって 毎晩 螢を流すのだろう 君の情の冷たさも (詞は大意です) |
3 入墨子
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入れ墨が蒼く悲しく 蛍に見える夜があったり 青蠅に見える夜があったりして 憎らしくもあり 愛おしくもあるのだ 入れ墨はこんなにもかなしいものなのか (詞は大意です) |
4 涼雨
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通り雨が過ぎて行った さやさやと 笹が揺れ 螢も去って行った そして君も... 月の明るい夜を 通り雨が過ぎて行った 濡れて僕だけが 野に残った (詞は大意です) |
5 別後
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濡れているのだろう クチナシの白い花を髪に挿して ああ君は 薄い衣に 野の香りを滴らせ どこで君は 濡れているのだろう (詞は大意です) |
6 燈
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草が揺れるのが見える 夢うつつの朝靄 燈火だけが涼しげに残る (詞は大意です) |
7 天の川
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葦の葉の露も 蘆(あし)の葉の露もしっとりと濡れ 愛する人は薄着を嘆いている 中空には声が聞こえる もう秋の渡り鳥の時期だ (詞は大意です) |
8 青蜜柑
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蜜柑の青さ その甘い香りにむせて今はひとり 囲炉裏の埋もれ火も消えて夜の壁に映る影もまたひとり (詞は大意です) |
9 鷺
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もう消えそうな葦の間に ひっそりと見える 鷺の姿 明るい場所を夢見てるのだろうか (詞は大意です) |
10 春近き日に
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風に吹かれている寒そうな星 柊の葉の棘は痛い 切ない恋をしていると 雪割草が咲くのを見ると 霜がもう消えそうになっているのを見ると 涙が流れて止まらないのだ 君よ 目を覚まして寄り添っておくれ 目覚めると悲しい朝だけれど わが世の春もきっと近いはずだ 光の鳥たちが飛び交って 杏の小枝は揺れ続けてるのだから 杏の小枝は揺れ続けてるのだから (詞は大意です) |
1948年の作ということですので別宮にとっても最初期の歌曲作品になりますが今でも代表作のひとつとして良く取り上げられる傑作です。残念ながら大木淳夫の著作権が切れていなくて歌詞をここで取り上げるわけには行かないのですが、この大木の詞がかなり古い言葉遣いの上に、象徴主義風の不思議な描写がなかなかに聞き取り難く、私なりに読み取った「大意」を各曲のところに書いて見ることにしました。とはいえ短い詩では大意とは言えない分量になってしまいました。鑑賞の助けには多分ならない自己満足ではありますけれどもやってみることにします。
( 2020.11.23 藤井宏行 )