日本の笛 |
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1 祭もどり
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お月さんとはぐれ わたしゃ お母ちゃん 恋の闇 |
2 搗布とたんぽぽ
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たんぽぽ踏めば、よう 春も末かよ のよ 様よ 搗布干場の たんぽぽなれば よう 果ては吹かれて 汐のすゑ |
3 親船小船
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ありゃ、親船よ、 見やれ、ゆさりとも 帆は揺れぬ おいら 小伝馬 まだ親がかり いろのろの字の 櫓も持たぬ |
4 浪の音
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日かげの長さ 浪の音聴きゃ 日の永さ 浪の音聴きゃ まだ日は永い 山は辛夷(こぶし)の 花ざかり あれは鷗か 日和の海か 山は檜の 昼の霧 山に日暮れて ひもじい時は 沖の大船(たいせん) 見て下る |
5 あの子この子
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嫁取り前じゃになんだんべ かぶら畑にゃ鰯がはねる お墓まいりでもしてやろか この子もとうとうおっ死んだ 嫁入り前だになんだんべ 花はじゃがいも うす紫よ かねでもたたいていきましょか どの子もどの子もなんだんべ 色事ひとつも知んねえでな 子芋はどっさり増えたによ かわいそうだよ まったくなあよ |
6 たまの機嫌と
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朝立つ虹は 時化やせぬかと 気にかかる |
7 ぬしは牛飼い
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笛吹き上手 いつも横眼に 見て通る 見やれ 水甕 黄八丈の羽織 わたしゃ 頭も 濡らしゃせぬ |
8 びいでびいで
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今 花盛り 紅いかんざし 暁(あけ)の霧 びいでびいでの あの花かげで 何とお仰(しゃ)った 末(すえ)かけた |
9 仏草花
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紅い花盛り 気儘さしゃんせ 今花盛り 紅い仏草花の まだ あの背戸に なにか忘れた 気がしてる 紅い仏草花の 咲く窓越えて 来いと誰か云うた 月に云うた 月にみつけた 仏草花の垣に 誰か忘れた 独木舟(カヌー)の櫂 |
10 関守
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そっと寄っていたら 山羊が見つけた 角(つの)立てた 明けの山椒の実を そっと出て噛めば 瑠璃鳥が見つけた 声立てた |
11 追分
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ひとり ほそぼそ 一節切(ひとよぎり) 椰子の花咲く 南の夏に 忍路(おしょろ)高島 北の雪 |
12 夏の宵月
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今宵の明(あか)さ 護謨(ゴム)の葉越しの 燈の青さ 島は宵月 宵からおじゃれ かわいい独木舟(カヌー)で 早よおじゃれ 今は宵月 夜ふけておじゃれ 浜はタマナの 花ざかり 忍び忍ばれ 夜ふけて来たが 今ぢゃ宵月 昼の虹 |
13 くるくるからから
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測候所の風見 島の日永の日は小(ち)さい くるくる 風にからから 椰子の実の殻よ 島の日永の日は高い からから |
14 落葉松
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からまつ原よ 下(しも)は追分 合(あい)の宿(じゅく) 駒の沓掛 追分手綱 唄もいそいそ 軽井沢 風も吹かぬに からまつ山は、 いつも松葉が はらはらと 誰も通れど、 山道 小道 寒むや からまつ 遠日射 雨に落葉松 谷間にゃ狭霧 せめて面(つら)出せ 閑古鳥 |
15 伊那
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木瓜(ぼけ)の花盛り 春蚕(はるご)かへそか (春蚕かへそか) 婿とろか 伊那は夕焼 高遠は小焼 明日は日和か (明日は日和か) 繭(まゆ)売ろか 桑の夜霜に ちらつく星は 夫婦(みょうと)星かよ (夫婦星かよ) まだ明けぬ |
16 山は雪かよ
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大寒小寒 飛んで 飛んで来た 豆小僧 寒い筈だよ 北山おろし 逃げて 逃げて来た 豆うさぎ |
17 ちびツグミ
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わしゃ山かせぎ 「腰には水筒(すいづつ) 山刀 肩には鳥網 蓑と笠、 えさえさえっさ えっさっさ 水濞かみかみ 九十九(つづら)折 北風ぴゅうぴゅう すっ飛んだ《 これも誰ゆえ アリャコノ ちびツグミ こうと網張りゃ もう 手のものよ 「鳥屋(とや)にはいろり火 自在鉤(かぎ) 徳利に濁酒(どぶろく) 山の薯(いも) ちろりや ちろりや ちんちろり 山鳥ゃほろほろ 雉子けんけん 夜明の明星 ちんちろり《 逃がしゃせぬぞへ アリャコノ ちびツグミ |
18 渡り鳥
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飛ぶ空見れば 冬も末かよ ちりぢりと 渡り渡りの みな風の鳥 <いつか吹かれて ちりぢりと |
19 ここらあたりか
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御機嫌さんか 軒(のき)に糖黍(とうきび) 青辛子(あおがらし) ここらあたりか 御機嫌さんか 背戸(せど)に柿の実 鵯(ひよ)のこえ |
20 あいびき
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丘まで出たが 欅(けやき)ばかりが さえざえと 遠くでカタコト 水車 近くでチイピイ 鵯(ひよ)のこえ 落葉ばかりが はらはらと 風に落葉が はらはらと |
21 野焼のころ
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まだ春寒か 逢わず帰るか 夜のふけか 野火のちょろり火 一山越して 燃えて行たやら 消えたやら 野火の火立(ほだち)の 薄れた頃か 明けの山鳥 ほろと啼く |
個々の曲にコメントを記載しています。作曲家のページよりご覧ください。
Hirai Kozaburo 平井康三郎
( 2006.11.02 藤井宏行 )