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Kolybelnaja pesnja    
  Proshchanije S. Peterburgom
ゆりかごの歌  
     ペテルスブルグよさようなら

詩: クーコリニク (Nestor Vasil'yevich Kukol'nik,1809-1868) ロシア
      Колыбельная песня

曲: グリンカ (Michael Glinka,1804-1857) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Spi,moj angel,pochivaj,
jasnykh glaz ne otkryvaj.
Baju,bajushki-baju,
baju,bajushki-baju.

Ne spish',a vremja uletit,
i grozno tuchi soberutsja,
i strasti prosnutsja,
i burja zhizni zakipit,
i strasti bujnyje prosnutsja,
i burja zhizni zakipit,
i burja zhizni zakipit.
Spasi i sokhrani
jego ot buri,vsemogushchy!

Rassej zemnykh volnenyj tuchi,
i tikhim schast'jem oseni.
Baju,bajushki-baju,
baju,bajushki-baju.

Spi,moj angel,pochivaj,
jasnykh glaz ne otkryvaj.
Baju,bajushki-baju,
baju,bajushki-baju.

Chu! Na poroge slyshen shum...
Vragi prishli,stuchatsja v dveri...
Stradan'ja i poteri,
roj strashnykh grjoz i gorkikh dum,
stradan'ja,zhertvy i poteri,
roj strashnykh grjoz i gorkikh dum.
Spasi i sokhrani
jego ot buri,vsemogushchij!

Rassej zemnykh volnenyj tuchi,
i tikhim schast'jem oseni.
Baju,bajushki-baju,
baju,bajushki-baju.

お眠り、私の天使よ、お休み
清らかな瞳を開かないで
ねんねんころりよ おころりよ
ねんねんころりよ おころりよ

眠らないと 時は飛び去り
恐ろしい黒雲が湧いてくる
怒りが目覚めて
人生に嵐がやってくる
荒々しい怒りが目覚めて
人生に嵐がやってくる
人生に嵐がやってくる
この子をお救いください
この嵐から、神様!

地上の災いを雲のように蹴散らし
穏やかな幸せをお与えください
ねんねんころりよ おころりよ
ねんねんころりよ おころりよ

お眠り、私の天使よ、お休み
清らかな瞳を開かないで
ねんねんころりよ おころりよ
ねんねんころりよ おころりよ

そら!戸口で騒がしい音がする
悪者がやってきて戸を叩く
苦しみと喪失が
恐ろしい悪夢が、苦々しい思いが湧きだす
苦しみと犠牲と喪失が
恐ろしい悪夢が、苦々しい思いが湧きだす
この子をお救いください
この嵐から、神様!

地上の災いを雲のように蹴散らし
穏やかな幸せをお与えください
ねんねんころりよ おころりよ
ねんねんころりよ おころりよ


哀愁のこもった子守歌です。でも詞はご覧頂けばおわかりの通り結構ブラックです。
この内容ではほとんど子供を脅迫してるんではないかともいえますが、それだけこの時代のロシアが暗く厳しいときであったということも感じ取れます。
(デカブリストの反乱が鎮圧され、当時のロシアはニコライ1世の恐怖政治が幅を利かせていました)
それだけに「穏やかな幸せをお与えください」のところの祈りの深さは心を揺さぶられずにはいられません。「バーユ バーユ(ねんねんよ)」のロシアの子守歌と、同じように悲しくそして美しい守り子唄(子守歌でないところに注意)をたくさん持っている日本人の心にもすっと響いてくる素敵な歌ではないでしょうか。

作曲者のグリンカも、親類や知人・友人の中に処刑や流刑となったデカブリストの関係者がたくさんいたといいますし、ロシア民族のための独自の音楽をつくりあげようという彼の努力は、しばしば都ペテルブルグの保守派の貴族やインテリと衝突する羽目に陥っていたといいます。そんな中で書かれた歌曲集がこの「ペテルブルグよさようなら」ですからその意味は深長。当時都に初めて敷設された汽車に乗って旅立つ喜びを歌った「旅のうた」や異国の風物へのあこがれを歌った「ボレロ」や「ふなうた」などの曲の間に、この曲や「ひばり」のようにロシアの抱える悲しみがほのかににじみ出る歌が聴こえてくるのはとてもよいです。
といいながら「ペテルブルグよさようなら」の全曲を収録したCDは確かOpus111というレーベルにあったと思うのですが私は聴いたことがなく、いくつかのロシア歌曲集やグリンカ歌曲集にちりぢりに収録されたこれらの歌を聴いたことがあるのみです。この「ゆりかごの歌」はやはりロシアのソプラノで、ドルリアクやヴィシネフスカヤなどの歌がいいですね。
まあ、いろいろ聴けるだけの選択肢はない曲なので、もし見つけられることがあればぜひ聴いてみてください。

( 2006.01.09 藤井宏行 )


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