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Spjashchaja Knjazhna    
 
眠る王女  
    

詩: ボロディン (Aleksandr Porfir'yevich Borodin,1833-1887) ロシア
      Спящая Княжна

曲: ボロディン (Alexander Borodin,1833-1887) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Spit,spit v lesu glukhom,
spit knjazhna volshebnym snom,
spit pod krovom tjomnoj nochi,
son skoval jej krepko ochi.
Spit,spit.

Vot i les glukhoj ochnulsja,
s dikim smekhom vdrug prosnulsja
vedm i leshikh shumnyj roj
i promchalsja nad knjazhnoj.

Lish' knjazhna v lesu glukhom
spit vse tem zhe mjortvym snom.
Spit,spit.

Slukh proshjol, chto v les dremuchij
bogatyr' pridjot moguchij,
chary siloj sokrushit,
son volshebnyj pobedit
i knjazhnu osvobodit, osvobodit.

No prokhodjat dni za dnjami,
gody idut za godami...
Ni dushi zhivoj krugom,
vse objato mjortvym snom.

Tak knjazhna v lesu glukhom
tikho spit glubokim snom;
son skoval jej krepko ochi,
spit ona i dni, i nochi.
Spit,spit.

I nikto ne znajet,skorol'
chas udarit probuzhden'ja.

眠る、眠る、死んだように静かに
魔法にかけられたお姫様は眠る
暗い夜の闇に包まれて眠る
まぶたをじっと閉ざして
眠る、眠る

おや、突然森は目覚める
不気味な笑い声と共に魔女たちが起き上がる
小鬼どもも騒ぎながら
お姫様の前を通り過ぎていく

お姫様だけは死んだように静かに
相変わらず目を閉じて眠る
眠る、眠る

うわさが駆け巡る、この深い森の中に
騎士がやってくるのだと
魔術を力で打ち破り
眠りの魔法を解き放つのだと
そしてお姫様を救い出す、救い出すのだと

しかし日々は過ぎ行き
幾年も幾年も経った...
だれひとりとして現れることはなく
そこは死の眠りが支配したままだ

そしてお姫様も死んだように眠ったまま
静かに眠る、深い眠りに
まぶたをじっと閉ざして
彼女は眠る 来る日も、来る夜も
眠る、眠る

そして誰も知らない
いつ目覚めの鐘が鳴るのかは


シャルル・ペローの寓話「眠りの森の美女」を下敷きにしたような作品ですが、こちらは最後まで王子様は現れることなく終わってしまいます。深く暗いロシアの森の中でいつ絶えるとも知れない子守歌の調べ。Spit,Spit(眠る、眠る)という言葉をくどいくらいに繰り返す中、ボロディンの朴訥とした旋律もあいまってとても不思議な歌になりました。魔女共の登場によるざわめきや、噂話の中の王子の登場による高揚感もふたたび現れるSpitのたゆたうメロディに打ち消され静かに消えていきます。
彼の歌曲作品は20曲そこそこと少ないですが、その中にあっても結構な数の自作の詩に付けた歌曲を残しています。これは学生時代の習作的ないくつかの作品を除くと何でも最初の歌曲作品なのだとか。彼が34歳の年、1867年に作られています。5人組のサークルの中でもこの曲は評判がよかったようで、その翌年にかけていくつかの歌曲を集中して作っています。

ボロディンの歌曲全集でもないとお目にかかれない曲ではありますが、それでも私の手元にはクリストフのもの(EMI)とグロウボキィのもの(Chant du Monde)という2枚のバス歌手が歌ったもの、Delosにある全集でメゾソプラノのタラソヴァが歌ったもの、そして全集ではありませんがソプラノのヴィシネフスカヤが歌ったもの(Erato)と多様な声で歌われた4種類の録音を見つけることができました。みなそれぞれに味わい深いですが、私が一番気に入ったのはメゾソプラノのタラソヴァの声、これが一番幻想的なこの歌のイメージに合っていたからでしょうか。もっともバスのグロウボキィの朴訥な歌も味がありましたし、クリストフの情景描写の巧みさも見事だと思いました(ちなみにこの曲の伴奏は作曲家のアレクサンダー・チェレプニンが行っていました)。ヴィシネフスカヤは他の3つに比べるとかなり早いテンポで歌っていてちょっとなじめないところもありましたが、その分ドラマチックな感じは強まったようで、これはこれで面白かったです。

さて、今回ロシア歌曲のことを調べるべくネットをいろいろと探しているうちに、このボロディンの歌曲を詳しく紹介しているとても素敵なサイトに巡り合いました。この曲ばかりでなく彼の代表的な歌曲12曲の日本語訳と、様々な独奏楽器とピアノに編曲された演奏(曲の雰囲気に合わせて独奏楽器を変えています)がMP3で聴けるサイト。
よもや日本でこれほど充実したボロディンの歌曲のサイトがあるとは思いもよらずただただ感動です。

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リンクをお願いしましたところ快くご了解頂きましたのでぜひどうぞ。この曲の幻想的な響きを音で聴いてみてください。ムソルグスキーの「子供部屋」と「死の歌と踊り」のこれまた素敵な詞と音楽もあります。
ロシア歌曲だけでなく他にもいろいろな曲がありますが、選曲にも、また編曲にも独自のこだわりが感じられてとても楽しいサイトでした。


( 2006.01.14 藤井宏行 )

( 2006.01.14 藤井宏行 )


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