クリストマスの歌 |
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天地にみちたる神の恩 やみにもかくれぬ神の恩 みそらの星とぞわれらを照らす うれしや神の恩 こころに余れる友の愛 霜にも枯れせぬ友の愛 園生(そのふ)の菊とぞわれらにかをる うれしや友の愛 |
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明治21年に出版された日本最初期の唱歌集(明治唱歌 第一集)は、新年(詞:大和田建樹・曲 奥好義)から始まって、季節折々の歌を順番に紹介しています(今も知られる曲としては「夕空はれて秋風ふき」の「故郷の空」が収録されている)。そして「紀元節」(2/11)や「天長節」(11/3)なんていう当時の行事(今も祝日ですね)を歌う唱歌に混じって12月ですから一番最後に紹介されているのがこの「クリストマスの歌」です。
前に日本初の讃美歌「よい土地ござります」で書きましたとおり、明治の初めにはご禁制の異教ということで庶民にも非常に抵抗の強かったキリスト教の風習、その後わずか十数年でこんな曲が唱歌になるというのも思えば物凄い変化ではないでしょうか?昭和20年代、つい先ほどまで鬼畜米英と言っていたのが敗戦と共にアメリカ文化一色にわずか数年で染まってしまったのと同じように、日本人の柔軟さ、といいますかしたたかさ(無節操さかも知れない)と同じような凄さを感じます。
もっともクリスマス自体が庶民に良く知られるようになったのは日本も近代化してきた明治も30年代後半からのようですし、今みたいに多くの人たちが敬虔さのかけらもなく能天気に騒ぐようになったのは第二次大戦後のことのようですから、明治21年といえばけっこうこの曲、時代を先取りしていることも事実なようです。
メロディは、この唱歌集の冒頭の説明によれば著名な外国人作曲家の旋律に付けた、とありますが誰の何という曲なのかは分かりませんでした。
そして詞はこの時代、世界地理から歴史、自然の風物に公衆道徳と世の中の森羅万象を唱歌の詞にしていたと言っても過言ではない詩人・大和田建樹、曲が讃美歌っぽいので恐らくは原曲の歌詞もある程度は生かしているのではないかと思いますが、それでもけっこう大胆な翻案はしているように思えます。
まあ楽譜を見る限りあまりぱっとした曲ではないので(最後の「うれしや」のところで音が1オクターブ跳ね上がるところなどはけっこう映えるかも)今音になって聴けることは期待できないでしょうけれども、日本におけるキリスト教受容のひとこまとして知っておく価値はある曲とは言えましょう。「クリストマスの歌」で検索していただくと容易に楽譜のあるサイトを見つけられますのでぜひお試しください。
( 2005.12.22 藤井宏行 )