片足 |
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花が黄色で、芽がしよぼしよぼで、 見るも汚ない梅の木に 小鳥とまつて鳴くことに、―― あれ、あの雪の麦畑(むぎばた)の、つもつた雪のその中に、 白い女の片足が指のさきだけ見えてゐる。 はつと思つて佇ずめば、 小鳥逃げつつ鳴くことに、―― 何時か憎いと思うたくせに、 卑怯未練な、安心さしやれ、 あれは誰かの情婦(いろ)でもなけりや、 女乞食の児でもない。 一軒となりの杢右衛門(もくよむ)どんの 唖の娘が投げすてた白い人形の片足ぢや。 |
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( 2018.04.15 藤井宏行 )