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なんだ空襲    
 
 
    

詩: 大木惇夫 (Ooki Atsuo,1895-1977) 日本
      

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください


戦争の歌をいろいろ探訪していくと激烈なインパクトをいろんな意味で受ける作品にそこかしこで出会います。そして私にとっては、藍川由美さんの録音で聴いた「用心づくし」をも超えてこの曲が一番はげしく心を揺さぶられました(戦争に対する悲しみとは別の意味で...)。作詞作曲のビッグネームのコンビも凄いです。しかも両者の作風からはあまりに異質なその内容、故郷広島が原爆で焦土と化したことへの怒りと悲しみとを「土の歌」(佐藤眞作曲)の第3楽章「死の灰」でぶつけている大木惇夫が、その原爆投下の4年前にこんな歌詞を書いて(書かされて)いたというのも運命の皮肉さを感じさせますし、なんだか「てなもんや三度笠」だか「吉本新喜劇劇場」か何かのテーマソングであるかのようなとんでもなくキッチュなメロディがあの山田耕筰の作であるというのも意外。
それにもまして空襲警報のサイレンを絶妙なタイミングで挿入した軽快な音楽にして「警報だー 空襲だ」と合唱と吹奏楽で歌わせている仁木他喜雄の強烈な編曲...

たいへん不謹慎なこととは承知しつつもCDから流れてきたときには「なんじゃこりゃあ」と思わず笑ってしまいました。
「愛染かつら」を歌ったおしどり歌手の霧島昇・松原操のコンビに二葉あき子が絡むソリスト陣も豪華に、「なんの敵機も蚊とんぼとんぼ」や「最初一秒ぬれむしろ かけてかぶせて砂で消す」と大変威勢良いソロと合唱のユニゾンで歌われています。まだ太平洋戦争も始まったばかりで、実はB-29による爆撃はそんな生易しいものではなかったのだということは夢にも思わなかった時、とにかく戦意高揚を狙うためにこんな歌にしたのでしょうか。CDに付いていた解説書(コロムビアCOCA-12461・八巻明彦氏による)では、この曲、防衛参謀中佐・難波三十四の詩に飯田信夫が曲を付けた「空襲なんぞ恐るべき」のB面として、防衛総司令部の意向でカップリングされた曲なのだそうです。A面の曲が軍人の手になる詩の故か、「空襲なんぞ 恐るべき 護る大空 鉄の陣」といった大仰な調子の歌であったので、B面は「出来るだけ判り易く、しかも具体的に」という要望があったためにこんなになったようです。

   勝つぞ勝たうぞ
   なにがなんだ空襲が
   負けてたまるか
   どんとやるぞ

時代というのはときにとんでもないものを生み出すことがあるのですね。決して作詞者、作曲者の名誉を貶めようというつもりはありません。こんな人たちにも後世からみるととんでもない役割を担わせてしまう戦争というものの恐ろしさを、殺戮や破壊とは別の側面から感じてしまったのでした。

( 2005.08.11 藤井宏行 )


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