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新しき朝    
 
 
    

詩: 永井隆 (Nagai Takashi,1908-1951) 日本
      

曲: 古関裕而 (Koseki Yuji,1909-1989) 日本   歌詞言語: 日本語


新しき
朝の光の
さしそむる
荒野にひびけ
長崎の鐘



長崎の原爆投下で被爆した人々の中で、自らも白血病に苦しみながら被爆者たちを救い、体が動かなくなってからはこの悲劇を語り伝えることを続けながらついに昭和26年、43歳で亡くなった医師・永井隆のエピソードはひたすら心を打ちます。
 http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/abm/index.html
昭和24年に出版された彼の手記「長崎の鐘」をもとに、作詞サトウハチロー・作曲古関裕而のコンビで作られた同名の歌謡曲は、悲しみに満ちた前半の調べが、最後力強い祈りの音楽へと昇華していくのがとても素晴らしい音楽ですが、これに感動して作曲者の古関に病床の永井が短歌を送ったのだといいます。それがこの「新しい朝」
「長崎の鐘」への反歌のようなすがすがしさが印象的なメロディを古関がつけていますが、これは藍川由美さんの古関裕而歌曲集で耳にすることができます。

心がけの悪い私は、永井氏のことは知っていてもその活躍については今まで詳しくは知りませんでした。放射線の研究をされていて被爆前に既に病気に冒されていたこと。敬虔なカトリック信者であったこと。奥さんは原爆で即死。その傍らには彼女がいつも持っていたロザリオが落ちていたといいます。
「長崎の鐘」に歌われているひとつひとつがこうして悲しい事実として紐解かれ、それでもなお明日への希望を忘れない歌声は氏自身のこの短歌へと繋がっていく。
戦争の悲惨さを伝えることも大事ですが、こういった人がかつていたのだ、ということもまた語り継いでいかないとなりません。
そしてこの歌も懐メロなどでなく、永遠に残る日本歌曲の名作になりますように。そんなことを思わずにはいられませんでした。

( 2005.08.09 藤井宏行 )


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