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夏の宵月    
  日本の笛
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
    日本の笛 (1922)  夏の宵月

曲: 平井康三郎 (Hirai Kozaburo,1910-2002) 日本   歌詞言語: 日本語


月の円(まる)さよ
今宵の明(あか)さ
護謨(ゴム)の葉越しの
燈の青さ

島は宵月
宵からおじゃれ
かわいい独木舟(カヌー)で
早よおじゃれ

今は宵月
夜ふけておじゃれ
浜はタマナの
花ざかり

忍び忍ばれ
夜ふけて来たが
今ぢゃ宵月
昼の虹



平井康三郎が北原白秋の詩集「日本の笛」から21編を選んで付けた歌曲集の中でも、音になったものを聴いていてとても楽しいのは南の島・小笠原を舞台にして書かれている「びいでびいで」「仏草花(ぶっそうげ)」「関守」「追分」、そしてこの「夏の宵月」と「くるくるからから」の6曲でしょう。日本の歌曲で南の島を題材にしたものは(沖縄や奄美の作曲家が地元で作った歌はともかく)あまりないような気がしますし、ましてや小笠原を舞台にした歌など他にはほとんど考えられません。
南の島ならではの風物が織り込まれた詩に、民謡調とはいってもどこか明るいユーモアを漂わせるこれらの曲は、今みたいな夏に聴くとムード満点。有名な「びいでびいで」のように春の歌もありますが、この歌でさえも雰囲気はやはり夏の感じがします。

さて、この「夏の宵月」、恋人を誘うセレナーデです。北国ではなんとなく外で恋歌を歌うというのはしっくりこないように思うのですが(偏見?)、こんな南の島の美しい月夜には戸外で恋を語るのもまた楽しげですね。
平井康三郎さんの日本情緒溢れるメロディも、ここではヴェニスの舟歌のようにゆったりとした流れの中で、どこか異国情緒を感じさせるようなものになりました。関定子さんの絶妙の歌唱でも聴けますが、それよりもこれってぜひクラシック以外の歌手の方に歌って頂けると素敵だろうな、と思う曲のひとつなのです。
特に聴いてみたいのが演歌歌手。抒情的なうたですから五木ひろしさんなんかに物凄く似合いそうな曲ではないでしょうか。

平井作品はこればかりでなく、演歌歌手のレパートリーになってもおかしくないような素敵なうたがたくさんあると思うのですが、「ジャンルの壁」が邪魔をするのかそんな素敵なクロスオーバーをまだ聴けたことはありません。どうせクラシック音楽の世界では取りあげる人もそんなに多くないのですし、変に埋もれさせて忘れられるよりはどなたかチャレンジしませんかね。どうあがいてもどこかバタくささが消しきれない山田耕筰の歌曲よりは断然演歌向きの名曲揃いです!

( 2005.07.06 藤井宏行 )


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