平城山 短歌連曲三部作 |
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人恋ふは 悲しきものと 平城山に もとほり来つつ たえ難かりき 古へも 夫(つま)に恋ひつつ 越へしとふ 平城山の路に 涙おとしぬ |
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まだ若き平井の作品ですが、かつては彼の代表作として紹介されておりました。お得意の日本情緒が見事に表出された美しい歌ではあるのですが、いかんせん言葉が古くなってしまいました。「もとほり来つつ」なんて言われても解説がなくては情感が伝わってこなくなると、万人のための愛唱歌としては苦しいものがありますでしょうか。
平城山(ならやま)とは、読みからも分かりますように奈良の県北にある丘陵地帯で、歴史的に由緒正しいところです。歌人の北見志保子はこの地を巡りながら、仁徳天皇の恋物語に自分の悲しい恋を重ねてこの2首を書いたのだといいます。
( 2017.12.30 藤井宏行 )