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えんどうの花    
 
 
    

詩: 金城栄治 (Kaneshiro Eiji,1903-1930) 日本
      

曲: 宮良長包 (Miyara Chouhou,1883-1939) 日本   歌詞言語: 日本語


えんどうの花の 咲く頃は
幼い時を 思い出す
家の軒端に 巣をくって
暮れ方かえった あのつばめ

えんどうの花の 咲く頃は
冷たい風が ふきました
妹おぶって 暮れ方に
苺を取りに 行った山

今朝は冷たい 風が吹き
つばめが一羽 飛んでいる
えんどうの畑は 寒けれど
わたしゃ一人で 帰りましょう



石垣島出身の音楽家&教育者の宮良長包(みやらちょうほう)は、八重山などに古くから残る民謡の編曲や幾多の童謡作品を通じて沖縄の文化・音楽を今に伝える上で非常に重要な役割を果たした人だといいます。恐らく今の沖縄以外の日本人にとって一番知られているのは、八重山の民謡を編曲した「安里屋ユンタ」ではないかと思いますが、その他にも「汗水節」や「赤ゆらの花」などの素敵な作品があります。
(「沖縄(八重山)のフォスター」と呼んでいるサイトもありました。言いたいことは分かりますがちょっと違うような...)
この曲「えんどうの花」は大正13年作曲で、この時代の中山晋平や本居長世などの童謡作品によく似たしみじみした曲調が特徴です。詩も標準語で書かれていますし音階も本土の長音階なので沖縄のうただとはちょっと気付きにくいですが(「冷たい風」などのフレーズも本土人が沖縄に持っているイメージと違いますし)、それでも中山や本居作品同様に歌い継がれていく価値はある佳曲だと思います。現に沖縄では今でも広く愛されているうたなのだとか。沖縄出身のアーティスト、例えばミヤギマモルさんや川畑アキラさん(ザ・コブラツイスターズ)などの録音もあります。
クラシック畑でも沖縄出身の歌手の方はよくリサイタルなどで取り上げられるようで、有名なところでは新垣勉さんの最新録音があるようですし、作曲者の親戚筋にあたるソプラノ歌手の宮良多鶴子さんの宮良長包歌曲集なんていうCDも出ていますが(残念ながらいずれも未聴です)、本土の歌手の皆さんにはほとんど省みられることもない歌になっている感があります。そんな中で何故かテノールの錦織健さんが、「てぃんさぐの花」のところで取り上げた作曲家・中村透氏の編曲によるこの曲を録音したアルバムがあるのが目を引きました。彼の歌声のスタイルにピッタリの歌曲だと思いますし、何よりこういう曲を手がけようという目利きができるのは素晴らしいです。

( 2005.06.23 藤井宏行 )


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