てぃんさぐぬ花 |
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てぃんさぐぬ花や 爪先(ちみさち)に染(す)みてぃ 親(うや)ぬゆしぐとぅや 肝(ちむ)に染(す)みり 天(てぃん)ぬぶり星(ぶし)や 読(ゆ)みば読(ゆ)まりしが 親(うや)ぬゆしぐとぅや 読(ゆ)みやならん 夜走(ゆるは)らす船(ふに)や 子(に)ぬ方星(ふぁぶし)目当(みあ)てぃ 我(わ)ん生(な)ちぇる親(うや)や 我(わ)んどぅ目当(みあ)てぃ |
鳳仙花の花は 爪先に染めて 親の教えは 心に染めなさい 天の群星は 数えれば数えられるが 親の教えは 数えきれない 夜走る船は 北極星が見守り 私を生んだ親は 私を見守る |
有名な沖縄の民謡(わらべうた)で、夏川りみさんとかKiroroの入れた録音なんかももありますが、「美ら島の歌(ちゅらしまのうた)」(Fontec)というタイトルで中村透さんが編曲された沖縄の民謡集の中の、沖縄出身のソプラノ玻名城律子さんの歌がとても素敵だったのでこちらを紹介します。
彼女の声は藍川由美さんをもう少しセクシーにしたような、端正さとエロスのバランスが絶妙です。
おまけに中村さんの編曲がピアノ伴奏を、このメロディなのにこのコード進行をするか?とびっくりしてしまうジャズスタンダードのような、はたまたフォーレのピアノ曲のような浮遊感のあるものにしたものですから、ニ六抜き(レとラの音を抜かす)の沖縄旋法と微妙に融け合って何ともいえず不思議な音楽になりました。民謡ですから素朴のようにも聞こえるかと思えば官能的でもあり、現代的な斬新さを醸し出しながらも古い伝統が息付いているという矛盾に満ちた美しさがこの編曲と演奏の魅力です。
詞は説教臭いですが、沖縄の言葉なのであまり押し付けがましくは聞こえません。
(というよりも耳で聞いても私には意味が取れません)
他の外国語の曲紹介のページとは逆に、左側に原詞を、右に標準語訳を付けてみました。
面白いのは鳳仙花の花びらの赤い色を爪に染めるという女の子の遊び。本土にはそういう風習はないように思いますが、韓国歌曲の「鳳仙花」のことを調べたときに、韓国にはそれと同じ風習があるということを知りました。中国の方から伝わったのでしょうかね。
編曲者の中村さんは北海道の出身なのですが、1975年から沖縄に住み、沖縄の民俗に根ざした作品をいろいろ書いているのだそうで、代表作は沖縄の悪戯神キジムナーを題材にしたオペラ「キジムナー時を翔ける」。このCDにもアンコール曲としてそこから1曲歌われています。
彼の編曲した沖縄民謡集の曲目は「どなんスンカニー」「てぃんさぐぬ花」「安里屋ユンタ」「トゥバラーマ」「なり山アヤグ」「ナークニー」「クムイ節」「だんじゅ嘉例吉」、そして民謡というよりはポピュラー歌曲の「芭蕉布」の9曲。いずれも玻名城さんの歌です。
そういえば藍川由美さんは、同じ沖縄民謡の編曲をこちらは沖縄出身の作曲家である金井喜久子が行っている歌曲集CDの中でこの歌を歌っており、このCDのタイトルがこの曲「てぃんさぐぬ花」になっています。こちらは学校唱歌のようなもっとオーソドックスなピアノ伴奏。折り目正しく歌われてこれはこれで実に美しいです。
(個人的にはKiroroの歌うちょっと切ない感じのうたもまたよろし。あとNHK教育TVのドレミノテレビで、うあさんのシャーマニスティックな歌声に大島保克さんのしみじみした三線&掛け合いで歌われたこのうたも大変素敵でした)
( 2005.06.22 藤井宏行 )