Menschenfeindlich |
人間嫌い |
Gegen mich selber in Haß entbrannt, Von vielen gemieden,von allen verkannt, So sitz' ich den lieben,den sonnigen Tag Und lausche des Herzens unwilligem Schlag. So sitz' ich bei Mondes vertraulichem Schein Und starr' in die leuchtende Nacht hinein, Allein! Nie gönnt mein Herz der Liebe Raum! Ich hasse die Wirklichkeit,hasse den Traum, Den Sommer,den Winter,die Frühlingszeit, Was gestern ich haßte,das hass' ich auch heut; So sitz' ich bei Mondes vertraulichem Schein Und starr' in die leuchtende Nacht hinein, Allein! |
おのれへの憎悪に燃え上がり、 大勢に避けられ、みなに誤解され、 俺は晴れ渡った日にこうして腰を下ろし 怒れる心の鼓動に耳を澄ます。 月の密やかな光のもと、こうして腰を下ろし 光降り注ぐ夜に目を凝らすのだ、 ひとりぼっちで! 俺の心には愛する余地など全くない! 俺は現実を憎み、夢を憎み、 夏を、冬を、春の時節を憎む。 昨日の憎しみ、今日も憎い。 月の密やかな光のもと、こうして腰を下ろし 光降り注ぐ夜に目を凝らすのだ、 ひとりぼっちで! |
ジャコモ・マイアーベーア(Giacomo Meyerbeer : 1791. 9. 5 - 1864. 5. 2)はドイツ生まれのユダヤ系でもともとYaakov Liebmann Beerという。Meyerは母方の苗字である。オペラの作曲家として名高いが独、仏、伊語による40曲を超える歌曲は殆ど顧みられることがないのが残念である。いくつかの録音を聴いてみると歌曲作曲家として魅力的な作品を少なからず作っていることが分かり、不当に軽視されているという感が否めない。「おいで!(Komm!)」や「ミーナ(Mina)」など一度聴くだけで惹き込まれてしまうこと間違いない。
この曲は、マイアーベーアが劇作家の弟ミヒャエル・ベーア(Michael Beer : 1800. 8. 19 - 1833. 3. 22)の詩に作曲したいくつかの作品の一つである。
人から誤解されて四面楚歌に陥り、そんな自分を責めて八方塞りの状況を見直すために自然を前にして思いを巡らす。生々しい激白の内容だが長い人生の間に思い当たる節のある方もいらっしゃるかもしれない。かくいう私もこういう状況、心境に陥ったこと無きにしも非ず。詩や音楽としてあらゆる感情を芸術に昇華できる人たちがうらやましく感じられるのである。
ピアノの急速な下行パッセージがどうにも抑えられない詩人の憎悪感をあらわにする。怒りを前面に押し出した歌曲というと例えばシューベルトの「怒れる吟遊詩人(Der zürnende Barde,D. 785)」などがあるが、シューベルトのあくまで音楽の枠の中における表現と比べると、マイアーベーアのこの曲は語りの要素が強く、一層直接的に訴えかけてくる。各節最後の「Allein!」が何度も繰り返され、孤立感を一層強調している。周りへの不信感が募ってどうしようもない時にはこういう曲を聴いてカタルシスを得るのも一つの方法かもしれない。
F=ディースカウDietrich Fischer-Dieskau&エンゲルKarl Engel(ARCHIV/DG : 1974年12月)とハンプソンThomas Hampson&パーソンズGeoffrey Parsons(EMI CLASSICS : 1991年6月)の演奏を聴いたが、前者の言うまでもなく巧みな声の演技力と後者の真摯な訴求力、それぞれに異なる魅力があり、エンゲル、パーソンズといった名人たちの高い技術を駆使した劇的表現力はどちらも素晴らしかった。
( 2005.06.19 フランツ・ペーター )