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On the idle hill of summer    
  BREDON HILL AND OTHER SONGS
夏の物憂い丘の上で  
     ブリードンの丘とその他の歌曲

詩: ハウスマン (Alfred Edward Housman,1859-1936) イングランド
    A Shropshire Lad 35 On the idle hill of summer

曲: バターワース (George Sainton Kaye Butterworth,1885-1916) イギリス   歌詞言語: 英語


On the idle hill of summer,
Sleepy with the flow of streams,
Far I hear the steady drummer
Drumming like a noise in dreams.

Far and near and low and louder
On the roads of earth go by,
Dear to friends and food for powder,
Soldiers marching,all to die.

East and west on fields forgotten
Bleach the bones of comrades slain,
Lovely lads and dead and rotten;
None that go return again.

Far the calling bugles hollo,
High the screaming fife replies,
Gay the files of scarlet follow:
Woman bore me,I will rise.

夏の物憂い丘の上
水の流れに眠気をさそわれながら
遠くで鼓手の太鼓の音を聞く
夢の中のノイズのようなドラミングを

遠く、近く、弱く、だんだん強く
音は道を通り過ぎていく
やあ友人たちよ、火薬の餌食よ
兵士たちは行進する、皆 死に向かって

東の西の戦場で忘れ去られ
殺された戦友たちの骨は晒され
愛らしい若者たちは死んで、腐って
誰も帰ってくるものはない

遠くから呼んでるラッパの音
それに答える鋭い笛
真紅の隊列は陽気に従う
女より生まれたこの身、我も立ち上がろう


第一次大戦のさなか、わずか31歳で戦死したイギリスの作曲家ジョージ・バターワースには、A.E.ハウスマンの詩集「シュロップシャーの若者」につけた歌がいくつもありますが、これはその中でも作曲者の運命を感じさせるような意味深長な詩の選択です。
もともとこの詩集自体が、第一次大戦に出て行くことになる若者たちの情感を掻き立てるような、「醜く老いるよりは美しく死にたい」といった感じの詩が多いのですが、これはその中でもかなりダイレクトなものではないでしょうか。
“Woman bore me”の節はたぶん元ネタがあると思うのですが(聖書か何か)、突き止めきれませんでした。ご存知の方はご教示ください。

それでもこれにつけられたメロディは流麗な、しかしちょっと物思いに耽るところも感じさせる、悲壮感などは微塵も感じさせない美しい歌です。
それでも最後の「Woman bore me」のあとにちょっとだけ間があって、「I will rise」となるところの効果は絶妙で、その後の作曲者の運命を重ね合わすと慄然としてしまいます。

歌曲集としてよく録音されている6曲の「シュロップシャーの若者」に含まれていないせいか、あまり聴ける機会は多くない曲ではありますが(「ブリードンの丘とその他の歌曲」という形で一応歌曲集になってはいますけれど)、ブリン・ターフェルの絶唱ともいえる録音があります(DG)。彼の歌はちょっとドラマティックになりすぎるきらいがあり、いくつかのイギリス歌曲ではそれが鼻につくこともあるのですが、こんな曲ではそれが実に良い方向に働いてとても魅力的です。同じ路線ですがもう少し端正なベンジャミン・ラクソンの歌もなかなか素敵です。

( 2005.06.18 藤井宏行 )


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