You spotted snakes Op.61 A Midsummer Night's Dream |
舌の割れてるまだらヘビ 真夏の夜の夢 |
You spotted snakes with double tongue, Thorny hedgehogs,be not seen; Newts and blind-worms,do no wrong, Come not near our fairy queen. Philomel,with melody Sing in our sweet lullaby; Lulla,lulla,lullaby,lulla,lulla,lullaby: Never harm, Nor spell nor charm, Come our lovely lady nigh; So,good night,with lullaby. Weaving spiders,come not here; Hence,you long-legg'd spinners,hence! Beetles black,approach not near; Worm nor snail, do no offence. Philomel, with melody... |
舌の割れてるまだらヘビ とげとげハリネズミ 出てくるな イモリやヘビトカゲも 悪さをするな 妖精の女王様には近づくな フィロメールよ きれいな節で やさしい子守唄を歌っておくれ ララ ララ ララバイ ララ ララ ララバイ いやなことや 呪文も魔法も 妖精の女王様に近づくな さあ、おやすみなさいまし 子守唄で 糸紡ぐクモよ こっちにくるな 行け アシナガグモ あっち行け 黒いコガネムシも 寄るんじゃない 毛虫もナメクジも 悪さをするな ナイチンゲールよ きれいな節で...(繰り返し) |
シェイクスピアの喜劇「真夏の夜の夢」の真夏(Midsummer)というのは実は夏至の時期のこと。ですから時期的には今くらいです。ヨーロッパでは日本よりもずっと爽やかな時期なんでしょうね。
妖精の女王ティタニアが眠りにつくときに、家来の妖精たちが踊りながら歌うこの子守唄も爽やかな喜びに満ち溢れています、っていっても歌に出てくるのは森に棲む生き物の中でもあまり出てきて欲しくないものばかりですが...
(もっともそういった生き物たちを並べることで、この歌を人間ではない何か不思議な妖精たちの歌らしくしている、ということもまた言えるのですけれども)
サヨナキドリ(ナイチンゲール・原詞ではフィロメールになっています)がこんなところにも現れています。ちょうどこの季節に活躍する鳥だからでしょうか。明治の文豪・坪内逍遥の訳ではこの鳥に「妙音鳥《フィロメル》」の名を当てています。
この詞に付けたメンデルスゾーンの夢見るように美しい劇音楽中の曲では、ソプラノとメゾの2重唱にコーラスも加わって、息を呑む美しい子守唄に仕上がっています。
あまり色々と聴き比べてはいませんが、個人的に好きな演奏はアンドレ・プレヴィンがウィーン・フィルを振ったPhilips盤。素晴らしい間の取り方や妙なる管弦の響きが夢の世界へといざなってくれます。エヴァ・リンドとクリスティーン・ケアーンズの妖精のデュエットがとても素敵で私の愛聴盤です。
作曲家の出身がドイツ圏ということもあってドイツ語の戯曲につける音楽として書かれたのでしょう。ドイツ語で歌われることが普通ですが、シェイクスピアの本場イギリスでの演奏、ジャネット・ベイカー&ヘザー・ハーパーの歌にオットー・クレンペラー指揮のフィルハーモニア管弦楽団や、デリア・ワリス&リリアン・ワトソンの歌にプレヴィン・ロンドン交響楽団などではオリジナル戯曲の英語版で歌われています。
これもそんなに違和感はなかったですが、やっぱり曲のオリジナルはドイツ語なのでその方がしっくりくるでしょうか。でもここでは原詩は英語のを載せました。
坪内逍遥の翻訳もなかなか味がありますのでご覧下さい。
(並べると私の訳の拙さが際立つが...)
ぽつぽつ模様の、舌が二つのお蛇さん、
刺々(とげとげ)だかれの蝟(はりねずみ)、来るな来るな。
ゐもりよゐもりよ、足なし蜥蜴よ、悪戯(わるさ)すな。
来るなよ来るなよ、お仙女さまの傍へは。
妙音鳥(フィロメル)よ、節(ふし)面白く、
歌へ歌へ、ねんねこ唄を。
ラゝ、ラゝ、ラゝビー
ラゝ、ラゝ、ラゝビー
此方(こっち)の大切(だいじ)なお仙女さまにや
恙(つつが)も、障りも、魔も附かぬ。
そんなら御寝(ぎよしん)なれ、ねんねこせい。
巣造り蜘蛛めら、こゝへは来るな。
脚長蜘蛛めよ、彼方(あっち)行け、彼方行け。
黒甲蟲(かぶとむし)、傍へも寄るな。
毛蟲も、蛞蝓(なめくじ)も、悪戯(わるさ)すな。
妙音鳥(フィロメル)よ、節(ふし)面白く...(以下繰り返し)
( 2005.06.18 藤井宏行 )