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We’ll go no more a-roving    
 
もう そぞろ歩きはやめよう  
    

詩: バイロン (Lord Byron,1788-1824) イギリス
    Poems  When we two parted

曲: ホワイト (Maude Valerie White,1855-1937) イギリス   歌詞言語: 英語


So,we’ll go no more a-roving
So late into the night,
Though the heart be still as loving,
And the moon be still as bright.

For the sword outwears its sheath,
And the soul wears out the breast,
And the heart must pause to breathe,
And love itself have rest.

Though the night was made for loving,
And the day returns too soon,
Yet we’ll go no more a-roving
By the light of the moon.
もう そぞろ歩きはやめよう
夜もこんなに遅いのだから
気持ちはまだ歩きたくて
月もまだ明るいのだけれども

剣が鞘をすり減らすように
魂は胸をやつれさせる
だから心にも息をつぐための休息が必要だし
愛にもやすらぎが必要なのだ

夜は愛のためにあるのに
朝はあまりに早くやってくる
でも もうそぞろ歩きはやめよう
月はこんなに明るいのだけれども


バイロンの有名な詩につけられたとろけるように美しい曲です。女性スキャンダルで石をもてイギリスを追われたバイロンは、イタリアのヴェニスで2年あまりの放蕩生活を続けましたが、この詩はそんな時期に書かれたものといいます。このあと詩人は心機一転、ギリシャの革命軍にと身を投じ36歳の短い生涯を戦病死で終えますが、そんな歴史を紐解いてみるととても意味深長な言葉ではないでしょうか。
イギリスのソプラノ、フェリシティ・ロットの歌うChandosレーベルにあるイギリス歌曲集”Favorite English Songs”の冒頭を飾るこの歌の作曲者ホワイトは海外在住の長かった言語学者として、何カ国語かの詩に曲を付けた国際色豊かな作風だったのだそうですが、彼女の生きたヴィクトリア時代の流行詩にドイツリートのスタイルを取り入れて非常に魅力的な曲をいくつも書いた、とライナーノートにありました。1888年作のこの歌も、確かにイギリス歌曲にはなかなかないような濃厚なロマンに満ち溢れて鮮烈な味わいです。ドイツものもフランスものもお得意なインターナショナルな活躍をしているロットにはうってつけの歌といえましょうし、実に見事な出来栄えです。
このホワイトの曲、Heliosレーベルにあるイギリスの女性作曲家の歌曲集ではテノールのロルフ・ジョンソンの歌で他に4曲ほど収められており、イギリスのリヒャルト・シュトラウスとでもいえる実に濃厚なそのスタイルが癖になりそうです。

( 2005.06.05 藤井宏行 )


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