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Pastoral   Op.31-2  
  Serenade for tenor,horn and strings
パストラール(牧歌)  
     テノール・ホルンと弦楽のためのセレナード

詩: コットン (Charles Cotton,1630-1687) イギリス
      

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: 英語


The day's grown old; the fainting sun
Has but a little way to run,
And yet his steeds,with all his skill,
Scarce lug the chariot down the hill.

The shadows now so long do grow,
That brambles like tall cedars show;
Mole hills seem mountains,and the ant
Appears a monstrous elephant.

A very little,little flock
Shades thrice the ground that it would stock;
Whilst the small stripling following them
Appears a mighty Polypheme.

And now on benches all are sat,
In the cool air to sit and chat,
Till Phoebus,dipping in the West,
Shall lead the world the way to rest.

夕暮れが迫り、たそがれ行く陽は
もはや沈むまであとわずか
だが、その巧みな技で馬をあやつり
夕日の馬車をすぐに丘の下へと引き込ませはしない

今や影も長く伸びて
野イバラは高い杉の木のように見え
モグラ塚も山脈のよう、そしてアリさえも
巨大なゾウのように見えている

とても小さな 小さな羊の群れも
彼等を養う広さの3倍も地面を影に染め
羊たちを追う牧童さえ
巨人ポリフェムスのようだ

そしていまこそベンチに皆で座り
涼しい空気の中語らうのだ
太陽神ホエブスが西へと沈み
世界を休息の地へと変えてしまう時まで


夕暮れの情景をホルンをソロに加えた弦楽の伴奏で美しく描いた曲です。まさに初夏から夏にかけての光り輝く夕暮れでしょうか。長い影が躍ってちょっぴりセンチメンタルになる時ですが、こんな夕暮れをいつまでも味わってみたい、というのも長い休暇が終わるときなどにはよく思うことですよね。
ブリテンのセレナード、以前ご紹介したピーター・ピアーズのテナーにタックウエルのホルンの朗朗とした名唱も素敵ですが、こういうしみじみとした歌にはイアン・ボストリッジのテナーもなかなか合っています。ノイネッカーのホルンにメッツマッハー指揮バンベルク響の伴奏も熱演です。(2005.05.06)

ギリシャの神話、英雄オデュッセウスの冒険記の中で巨人サイクロプスの住む島に漂着するシーンがありますが、そこで出てくるサイクロプスの一人がこのポリフェムスなのだそうです。

( 2007.09.15 藤井宏行 )


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