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Chanson triste    
 
悲しき歌  
    

詩: ラオール (Jean Lahor,1840-1909) フランス
    L'Illusion - 1. Chants de l'Amour et de la Mort 10 Chanson triste

曲: デュパルク (Eugène Marie Henri Fouques Duparc,1848-1933) フランス   歌詞言語: フランス語


Dans ton coeur dort un clair de lune,
Un doux clair de lune d'été,
Et pour fuir la vie importune,
Je me noierai dans ta clarté.

J'oublierai les douleurs passées,
Mon amour,quand tu berceras
Mon triste coeur et mes pensées
Dans le calme aimant de tes bras.

Tu prendras ma tête malade,
Oh! quelquefois,sur tes genoux,
Et lui diras une ballade
Qui semblera parler de nous;

Et dans tes yeux pleins de tristesse,
Dans tes yeux alors je boirai
Tant de baisers et de tendresses
Que peut-être je guérirai.


君の心に月明かりが眠る
やさしい夏の月明かり
煩わしいこの世から逃れ
君の明りに溺れよう

過ぎた苦しみは忘れよう
恋人よ、君が僕の悲しい心と思いとを
その腕の中で
穏やかに心をこめて揺するとき

病む僕の頭を手に取って
そう、ときどきは膝の上で
昔の歌を聞かせておくれ
僕達を語るような昔々の

そして悲しみに満ちた君の瞳から
僕におくれ、何度もの
接吻と抱擁を
それでおそらく、僕は治るであろうから


声楽が好きで下手の横好きで修行途中のOLです。学生の時の専攻がフランス語だったので、マイナーながらデュパルクという歌曲作家の曲が好きでよく歌います。一番好きなのが、J.ラオール作詞の「悲しき歌」です。これは定訳をまだ見つけていないのですが、恥ずかしながらご紹介します。

デュパルクについては、G.Suzetが歌う「旅への誘い」が有名ですが、ボードレールの原詩については名訳が数々あるのでとてもとても...。他にご要望があれば、定評のある訳がない群小詩人の詩に作曲したものを選んでご紹介できればと思っています。

(1999.06.22 Contessa)


ジャン・ラオール(1840-1909)という詩人の詩には、このデュパルクはじめ19世紀後半に活躍した作曲家がたくさん曲を付けています。言葉の選び方などはそんなにあっと驚かされるような斬新さはなく、文学的にはそんなに高く評価されている人ではないようですけれども、ちょうど同じように文学的には高い評価を受けていないドイツのウィルヘルム・ミュラーが、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」や「冬の旅」で後世に名を残したように、歌の詩としては多くの作曲家の霊感を呼び覚ましたということなのかも知れません。デュパルクの数少ない作品の中にもこの曲含め3曲の作品がこのラオールの詩による歌曲であり、かなりのヒット率ではないでしょうか。

さて、この詩、恋人に甘えまくっている男のことを描いているようですけれども、どうもよくよく読んでみると彼は重い病にかかっているようですね。
当時よく見られた不治の病といえば結核。たぶん最後の節の「きみの眼から飲み干す Dans tes yeux alors je boirai(逐語訳ではこうなります)」、何でここで”飲むboirai”が出てくるのか初めはよく分からなかったのですが、これは薬をイメージしているのでしょう。
恋する人の優しいまなざしさえあれば、たとえキスはできなくても(病気がうつったらいけないのでキスできない)生きようという勇気が湧いてくるということなのではないでしょうか。

原題は冒頭の一節「Dans ton coeur dort un clair de lune」ですが、デュパルクは「悲しき歌(Chanson triste)」という題を付けて歌曲にしています。同じ詩にはサン・サーンスが曲を付けていますので、私の試みた訳はそちらの方( 「きみの心に」 サン=サーンス)に載せることにします。

  藤井宏行  〜あそびの音楽館デュパルク特集に合わせ解説追加 2006.04.18

( 2006.04.19 Contessa )


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