Battle Hymn of Republic |
リパブリック賛歌 |
Mine eyes have seen the glory of the coming of the Lord; He is trampling out the vintage where the grapes of wrath are stored; He hath loosed the fateful lightning of His terrible swift sword; His truth is marching on. (Chorus) Glory! Glory! Hallelujah! Glory! Glory! Hallelujah! Glory! Glory! Hallelujah! His truth is marching on. I have seen Him in the watchfires of a hundred circling camps They have builded Him an altar in the evening dews and damps; I can read His righteous sentence by the dim and flaring lamps; His day is marching on. (Chorus) I have read a fiery gospel writ in burnished rows of steel: ”As ye deal with My contemners,so with you My grace shall deal”: Let the Hero born of woman crush the serpent with His heel, Since God is marching on. (Chorus) He has sounded forth the trumpet that shall never call retreat; He is sifting out the hearts of men before His judgement seat; Oh,be swift,my soul,to answer Him; be jubilant,my feet; Our God is marching on. (Chorus) In the beauty of the lilies Christ was born across the sea, With a glory in His bosom that transfigures you and me; As He died to make men holy,let us die to make men free; While God is marching on. (Chorus) |
我が眼は主の降臨される栄光を見てきた。 怒りのブドウが貯えられる酒ふねを、主は踏みつけて行進する 恐ろしき剣を振りかざし、運命の稲妻を落とすのだ 主の真実は行進する (合唱) 主に栄光あれ ハレルヤ! 主に栄光あれ ハレルヤ! 主に栄光あれ ハレルヤ! 主の真実は行進する 何百もの軍団が集まるキャンプのかがり火の中に主を見た 夜霧と夜露の中、皆は主を祭る場を設ける ゆらめくかすかな明かりのもとでも、私には主の正しき御言葉が読める 主の真実は行進する (合唱) 私はみがかれた大砲の列に記された猛々しい福音を読んだ 「我が敵と戦う限り、我が恵みは汝のもとにある」と 女より生まれし英雄、かかとにて蛇を滅ぼさせよ そして神は行進する (合唱) 退却は決して告げないラッパを鳴らし 最後の審判を下す前にも人々の心を揺り動かす おお、急げ我が心よ、主の御心に答えるのだ。喜び勇め我が足よ 我らが神は行進する (合唱) 美しきユリの咲く中、海の向こうで救世主はお生まれになった み胸の栄光と共に、君を、我を尊いものと変えた 死して人々を聖なるものとした主のように、我らも人々を自由にするために死のう 共に神は行進する (合唱) |
日本では「おたまじゃくしは蛙の子」と、あるいは「権兵衛さんの赤ちゃんが風邪ひいた」と、はたまた東京近辺在住の方であれば「まあるい緑の山手線...」という歌詞が自然に口をついて出てくるであろうこの曲リパブリック賛歌ですが、これも南北戦争に因縁深い曲でした。
もともとは戦争とは関係ない曲だったようですが(1850年代にSteffeという人によって作られた”Say brothers,will you meet us”というキャンプの歌だったという説が有力)、南北戦争勃発と共に北軍の兵士たちによってこのメロディに付けた
John Brown`s body lies a moudering in the grave,
John Brown`s body lies a moudering in the grave,
John Brown`s body lies a moudering in the grave,
But his soul goes marching on
ジョン・ブラウンの体は墓の中で朽ちる
ジョン・ブラウンの体は墓の中で朽ちる
だが彼の魂は行進する
という替え歌が流行りました。これをより格調高い歌にと、奴隷解放論者のジュリア・ハウという女性が聖書に基づく詩を付けて雑誌に発表したのが今に伝わっているのがこのリパブリック賛歌です。
このあたりの歴史的経緯についてはとても詳しいサイトがありますのでそこにお譲りして、私はこの詞の方をじっくりと読み解きたいと思います。
http://www.worldfolksong.com/closeup/battlehymn/history/intro.htm
とは言いながらも、この詞、聖書やキリスト教の知識がないと何だかチンプンカンプンで、うまく訳せているかどうか自信がありません。第一節の「怒りの葡萄」は、スタインベックの同名の小説にもなったヨハネの黙示録から来ているようですが、あとの部分はちょっと調べきれませんでした(第3節はヨブ創世記に元があるという説も見ましたが詰めきれていません。また「かかとで蛇を踏み潰す」というのは聖Patrickがアイルランドから大蛇(悪魔の象徴)を追放したときの伝説からきているとの説もありました)。それでも良く分かるのは、ピューリタンの移住以来綿々と続く生真面目なアメリカの神への信仰。この戦いは奴隷を解放する正義の戦いで、我々は神の意志を実現しているのだ、という激しさです。
2001年9月の世界貿易センターなどへのテロのあと、アメリカのサイトでこの曲を取り上げているところがびっくりするくらい増えましたが、これも「これはテロリスト(という邪悪なもの)との戦いだ」という信仰心篤いアメリカ人たちの気持ちの現れでしょうか。
アフガンやイラク、ソマリアやボスニアにアメリカ軍が乗り出して行くことが正義かどうかは私には判断できませんが、少なくともそこへ赴くアメリカの兵士たちはここで歌われているような「神の意志を実現するために戦うのだ」という覚悟だけは固めているはず。そうでなければ戦争のように恐ろしく、苦しいことは普通の人間にはできないはずです。そんな視点でこの歌を見ると色々考えさせられることが多いです。
この信仰心を尊いものとみるのか馬鹿げたものとみるのか?、でもパレスチナの問題にしてもボスニアの問題にしても、ここまで深くこじれてしまった根っこにあるのは皆このメンタリティですよね。感動的なバッハの宗教的カンタータのすぐ近いところにこういうものがあるのだ、ということを理解しておくのは決して無意味なことではないと思います。それこそが人間というものの存在の悲しみ。
(2005.03.20)
このメロディに「ひとりひとりが腕組めば たちまち誰でも仲良しさ」という歌詞(ともだち賛歌)を付けた阪田寛夫さんが先日お亡くなりになりました。童謡の世界では幅広く活躍されていてこのサイトでも私が取り上げた大中恩さんの「さっちゃん」の詩を書いている人でもあります。真面目に直訳するとキリスト教の正義感が強烈なこの歌を、もっと博愛的な歌詞にして日本の小学校でも歌えるようにした功績は大きいでしょう。そのほかの幾多の童謡でも私が子供のころは随分とお世話になっているわけですが、こうして歳を取ってすれてしまうとほとんど接することもなくなってしまったのは考えてみれば悲しいことではあります。
この「ともだち賛歌」でもこんなフレーズがありました。
「おひげをはやした おじさんも むかしはこども」
ご冥福をお祈り致します。
( 2005.03.26 藤井宏行 )