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DIXIE'S LAND    
 
ディキシーランド  
    

詩: ダニエル・エメット (Daniel Decatur Emmett,1815-1904) アメリカ
      

曲: エメット (Daniel Decatur Emmett,1815-1904) アメリカ   歌詞言語: 英語


I wish I was in the land of cotton,
Old times there are not forgotten;
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
In Dixie's Land where I was born in,
Early on one frosty morning,
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
Then I wish I was in Dixie! Hooray! Hooray!
In Dixie's Land I'll take my stand,to live and die in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!

Old Missus married ”Will the Weaver”;
William was a gay deceiver!
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
But when he put his arm around her,
Smiled as fierce as a forty-pounder!
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
Then I wish I was in Dixie! Hooray! Hooray!
In Dixie's Land I'll take my stand,to live and die in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!

His face was sharp as a butcher's cleaver;
But that did not seem to grieve her!
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
Old Missus acted the foolish part
And died for a man that broke her heart!
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
Then I wish I was in Dixie! Hooray! Hooray!
In Dixie's Land I'll take my stand,to live and die in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!

Now here's a health to the next old missus
And all the gals that want to kiss us!
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
But if you want to drive away sorrow,
Come and hear this song tomorrow!
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
Then I wish I was in Dixie! Hooray! Hooray!
In Dixie's Land I'll take my stand,to live and die in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!

There's buckwheat cakes and Injin batter,
Makes you fat or a little fatter!
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
Then hoe it down and scratch your gravel,
To Dixie's Land I'm bound to travel!
Look away! Look away! Look away,Dixie's Land!
Then I wish I was in Dixie! Hooray! Hooray!
In Dixie's Land I'll take my stand,to live and die in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!
Away! Away! Away down South in Dixie!

あの綿花の国にずっと住みたいものだ
そこでの懐かしい日々は忘れられない
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
私の生まれたディキシーランドの
霜の下りた寒い朝よ
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
そこでまた暮らせたら!フラー!フラー!
ディキシーの地に立ち、暮らし、死ぬのだ!
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー

オールドミスが「機織工ウィル」と結婚したが
このウイリアム、とんだ詐欺師だった!
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
女を腕に抱くときは
やつは大物狙いの不敵な笑み
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
そこでまた暮らせたら!フラー!フラー!
ディキシーの地に立ち、暮らし、死ぬのだ!
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー

やつの顔は屠殺人のずる賢さ
だが女の方は、そんな様子にはまるで気付かない
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
オールドミスはそんな愚か者の役割を演じているうちに
やつのせいでとうとう心臓がやられてくたばっちまった!
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
そこでまた暮らせたら!フラー!フラー!
ディキシーの地に立ち、暮らし、死ぬのだ!
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー

さてさて次にカモになるオールドミスに乾杯
キスしてくれるすべての娘たちに乾杯
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
もし君が悲しみからさよならしたけりゃ
明日この歌を聴きにくれば良い!
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
そこでまた暮らせたら!フラー!フラー!
ディキシーの地に立ち、暮らし、死ぬのだ!
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー

そこにはバターとそば粉のケーキがある
君をちっとはふっくらさせるさ
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
そこを耕して砂利を掘れ
ディキシーランドに行こうじゃないか!
懐かしい!懐かしい!懐かしい!ディキシーランド!
そこでまた暮らせたら!フラー!フラー!
ディキシーの地に立ち、暮らし、死ぬのだ!
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー
遥か!遥か!遥か遠き南部の地ディキシー

綿花の国、アメリカの南部諸州は別名ディキシーランドとも呼ばれます。そんな南部人にこよなく愛されたこの歌、南北戦争時には南軍の兵士たちに愛唱された歌でした。
スイスの作曲家エルネスト・ブロッホがナチスを逃れて第2次大戦時アメリカに亡命していたときに書いた交響詩「アメリカ」では、南北戦争のシーンをそんな歴史を踏まえて北軍側は「リパブリック賛歌」を、そして南軍側はこの「ディキシー」をテーマに、この2曲を対位法的に絡ませながら描写している面白い作品です(ストコフスキー指揮シンフォニー・オブ・ジ・エアーの盤(Vangard)やシュワルツ指揮シアトル交響楽団(Delos)などで聴けます)。

歌詞は何やら脈絡がないですが、もともとこの曲がミンストレルショー(白人の芸人が顔を黒く塗り、黒人の格好をして歌ったり踊ったりするショー)のために書かれた曲のためでしょう。作曲者のエメットはそんなミュージカル劇団「ブライアント一座」の座付きの作曲家だったようで、この曲の初演は1859年のニューヨークでした。
初演と間を置かず大ヒットとなりアメリカでは南北問わず広く愛唱されましたが、”in Dixie's Land I'll take my stand,to live and die in Dixie!”のフレーズがまさに南軍の兵士たちの心意気を代弁したようなものでしたから、南北戦争のさなかいつしか南軍の軍歌のようになってしまいました。
詞も軍歌によくありがちなように様々な替え歌が作られ、南部諸州の人たちの中には、これは南部に古くからある民謡だ、と信じる人もいたとか。

南軍が敗退したあと、南部の軍楽隊の楽器が市中に流れてディキシーランドジャズになった、というような話も聞きますが、ともあれ平和になった時代にまた、この「ディキシー」、ジャズやカントリーミュージックにアレンジされて色々なところで聴けるようになりました。

ミンストレルショーで顔を黒く塗り、黒人のふりをして歌う歌としてはフォスターの諸作品(「故郷の人々」や「ケンタッキーの我が家」など)が今でも有名で、また虐げられた黒人奴隷たちの気持ちに深く共感しているかの詞は今読んでも感動的です。それに比べると同じミンストレルでも、このエメットのは当時の雰囲気を彷彿とさせるようなある意味「心ない」歌詞。そんなところが2番以降の詞があまり紹介されたり歌われなくなってしまっている理由なのでしょうか?私も今回初めて見ることができました。

そういえば日本でも一昔前、このミンストレルショーばりに顔を黒く塗ってブラックミュージックっぽい歌謡曲を歌っていたシャネルズってグループがありましたが、今こんなことを日本でできるものなのでしょうか?
歴史や文化の無知に基づく差別的な行為というやつは多分これからもなくならないでしょうし、私もきっと知らず知らずのうちにやっているに違いありません。
でもそれを恐れるあまりに萎縮してなにもできなくなったり、あるいは事勿れに陥ったりしてしまうのではそれこそ文化は退廃します。最近はややましになってきましたが、戦前や戦後も70年代ころまでの映画や音楽の復刻やリバイバルがこのために難しく、文化的な価値は高いのに幻の作品と化しているものが結構あります。そういったものを闇に葬ることが果たしてわれわれに取って良いことなのか?、また新しい創造をする際に外部強制力として働き、製作者がびくびくしながら作るような状況が果たして良いことなのか?
ミンストレルショーの話ひとつ取っても、今の我々に関わってくるような話はたくさんあるのです。それから目をそむけて事勿れにいくのか、それともそこでとことん考え、悩むことで創造していくのが良いのか。少なくとも私は後者の道を選ぶ芸術や芸能を愛したいと思っています。

( 2005.03.20 藤井宏行 )


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