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That's What's the Matter    
 
そいつが問題  
    

詩: フォスター (Stephen Collins Foster,1826-1864) アメリカ
      

曲: フォスター (Stephen Collins Foster,1826-1864) アメリカ   歌詞言語: 英語


We live in hard and stirring times,
Too sad for mirth,too rough for rhymes;
For songs of peace have lost their chimes,
And that's what's the matter!
The men we held as brothers true,
Have turn's into a rebel crew;
So now we have to put them thro',
And that's what's the matter!

(chorus)
That's what's the matter,
The rebels have to scatter;
We'll make them flee,
By land and sea,
And that's what's the matter!


Oh! yes,we thought our neighbors true,
Indulg'd them as their mothers do;
Thy storm'd our bright Red,White and Blue,
And that's what's the matter!
We'll never give up what we gain,
For now we know we must maintain
Our Laws and Rights with might and main;
And that's what's the matter!

(chorus)
That's what's the matter,
The rebels have to scatter;
We'll make them flee,
By land and sea,
And that's what's the matter!


The rebels thought we would divide,
And Democrats would take their side;
They then would let the Union slide,
And that's what's the matter!
But,when the war had once begun,
All party feeling soon was gone;
We join'd as brothers,ev'ry oneS!
And that's what's the matter!

(chorus)
That's what's the matter,
The rebels have to scatter;
We'll make them flee,
By land and sea,
And that's what's the matter!


The Merrimac,with heavy sway,
Had made our Fleet an easy prey
The Monitor got in the way,
And that's what's the matter!
So health to Captain Ericsson,
I cannot tell all he has done,
I'd never stop when once begun,
And that's what's the matter!

(chorus)
That's what's the matter,
The rebels have to scatter;
We'll make them flee,
By land and sea,
And that's what's the matter!


We've heard of Gen'ral Beauregard,
And thought he'd fight us long and hard;
But he has play'd out his last card,
And that's what's the matter!
So what's the use to fret and pout,
We soon will hear the people shout,
Secession dodge is all play'd out!
And that's what's the matter!

(chorus)
That's what's the matter,
The rebels have to scatter;
We'll make them flee,
By land and sea,
And that's what's the matter!


我らは厳しく、混乱した時代に生きている
浮かれるには悲しすぎ、詩を作るには厳しすぎる
それで平和の歌は歌えなくなってしまった
そう、そいつが問題!
信頼できると思っていた隣人が
実は裏切り者になってしまったこと
だから彼らを懲らしめねばならないこと
そう、そいつが問題!

(合唱)
そう、そいつが問題
裏切り者は蹴散らされねば
やつらを追い払うんだ
海から陸から
そう、そいつが問題


おお!、我らは隣人たちが誠実だと思っていた
やつらを母親たちがそうするように甘やかしていた
やつらはやがて我らの団結を乱しはじめた
そう、そいつが問題
われらは勝ち取った独立を決して諦めない
今から守らなければならないのだ
われらの法を、正義を、精一杯の力で
そう、そいつが問題

(合唱)
そう、そいつが問題
裏切り者は蹴散らされねば
やつらを追い払うんだ
海から陸から
そう、そいつが問題


反逆者たちはわれらが分裂すると考え
そして民主党はやつらの側に付いた
それで連邦は崩壊するのだと
そう、そいつが問題!
だが、ひとたび戦争が始まれば
すべての党派的争いは消え去り
われらは兄弟のように団結した
そう、そいつが問題!

(合唱)
そう、そいつが問題
裏切り者は蹴散らされねば
やつらを追い払うんだ
海から陸から
そう、そいつが問題


メリマック号は強大な軍艦だ
われらの艦隊を手もなくひねる
だが我らがモニター号が現れた
そう、そいつが問題!
エリクソン提督に乾杯
彼の成し遂げたことは言い尽くせない
話しはじめたら止まらない
そう、そいつが問題!

(合唱)
そう、そいつが問題
裏切り者は蹴散らされねば
やつらを追い払うんだ
海から陸から
そう、そいつが問題


ボーリガード将軍の話は聞いている
やつは我らと激しい戦いを繰り広げているが
ついに最後のカードを切ってしまった
そう、そいつが問題!
だからやきもきしても仕方ない
すぐに皆こう叫ぶ時が来るだろう
南部脱退は万策尽きたと
そう、それが問題!

(合唱)
そう、そいつが問題
裏切り者は蹴散らされねば
やつらを追い払うんだ
海から陸から
そう、そいつが問題


軽快なメロディに乗って楽しげに歌われるこの曲、詞をよくよく見るとかなり政治的な歌です。”That's What's the matter”っていうのは「そいつが問題」と訳しましたが、どっちかというと日本語の「問題」というときのネガティブなイメージよりは「そいつが論点」とか「そこがポイント」といったニュアンスのように思います。1862年の作ですが、南北戦争の歴史的事実を織り交ぜながら、北部の主張を歌に乗せています。
いくつか補足解説をしますと、メリマック号とは南軍の持っていた装甲艦、当時は木造の軍艦がほとんどであった中、バージニア州の造船所で1861年にはまだ製造中でした。バージニアが南部に参加したため一度は竣工前に破壊されますが、南部軍が造船所を支配した後に再生されて「バージニア号」となります。1862年3月のハンプトン・ローズ海戦では緒戦で大活躍しますが、この歌でも歌われている通り翌日参戦した北軍の装甲艦モニター号と世界初の装甲艦同士の戦闘をすることになりました。
モニター号はやはりこの歌でも名前が出てきているスウェーデン人の造船技師エリクソンの設計になる装甲艦で、艦の大部分を喫水の下にするという革新的なものだったのだそうです。同型の艦は何隻か建造され、戦争中にはミシシッピ川での戦闘で活躍したようです。
またボーリガードは南軍の陸軍大将。優秀な人だったようですが南部の大統領デイヴィスと折り合いが良くなく、存分の活躍ができたとは行かなかったようです。ここで言われる「最後のカード」というのが何なのかは不明ですが、この歌が作られた1862年(の恐らく春頃)当時はテネシー州で、彼は有名な北軍のグラントと戦闘をしておりました。

日本でもこのメロディで「小泉首相は改革案を審議会に丸投げした 官僚は族議員たちを巻き込んで反撃に移るだろう そう、そいつが問題!」ってな感じで時事をパロッて歌うと面白いように思うのですが、あまり最近は政治や世相を茶化す反骨精神のあるコメディアンが少ないようで寂しい限りです。芸能人仲間ばかりを楽屋落ちのように斬ってるギャグばかり見るのはなんだか私には閉塞感ばかりが募ります。社会主義の退潮以来、「武器としての笑い(by飯沢匡)」もまたその副作用のように失われてしまっているかのようですが、もともと両者は別物のはず。こんな世の中だからこそ、そのおかしなところを下卑にならないように笑い飛ばす、というのはとても知的な営みなはずなのですが。

「フォスターの夜会」のCDでも、レスリー・グウィンのバリトンとジャン・デガエタニのメゾの掛け合いにピアノとリコーダーの伴奏が絡んで飄々とした味が楽しいのですが、EMIのトマス・ハンプソンの歌ではカントリーバンドの伴奏で一層楽しげに仕上がっていてより素敵です。クラシック歌手を離れると、南北戦争に関わる歌を集めた録音はAmazonなどを見るとたくさんあるのでこれはおいおい探訪して行こうかと思います。

( 2005.03.10 藤井宏行 )


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