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Voici que le Printemps   L 52  
 
今はもう春...  
    

詩: ブールジェ (Paul Bourget,1852-1935) フランス
    Les aveux - Dilettantisme  Romance

曲: ドビュッシー (Claude Achille Debussy,1862-1918) フランス   歌詞言語: フランス語


Voici que le printemps,ce fils léger d'Avril,
Beau page en pourpoint vert brodé de roses blanches.
Paraît leste,fringant et les poings sur les hanches,
Comme un prince acclamé revient d'un long exil.

Les branches des buissons verdis rendent étroite
La route qu'il poursuit en dansant comme un fol;
Sur son épaule gauche il porte un rossignol,
Un merle s'est posé sur son épaule droite.

Et les fleurs qui dormaient sous les mousses des bois
Ouvrent leurs yeux où flotte une ombre vague et tendre;
Et sur leurs petits pieds se dressent,pour entendre
Les deux oiseaux siffler et chanter à la fois.

Car le merle sifflote et le rossignol chante;
Le merle siffle ceux qui ne sont pas aimés,
Et pour les amoureux languissants et charmés,
Le rossignol prolonge une chanson touchante.

そら、春だ。四月という名の軽やかな少年が
白いバラの刺繍入りの緑の服を着て
軽快に、明るく、拳を腰に当てて現れる
長い異国暮らしから歓呼を受けて戻ってきた王子のように

緑の茂みの小枝は道をふさぐ
うきうきと踊りながら王子が歩く道を
彼の左肩にはナイチンゲールが止まる
右肩にはツグミが止まった

そして森の苔の下で眠っていた花たちも
優しい翳りのある揺れ動く瞳を開き
小さな足で立ちあがろうとする
この二羽の鳥が同時に歌い、さえずるのを聞いて

ツグミがさえずり、ウグイスが歌うのは
ツグミはモテない男たちを冷やかし
そしてお互いに夢中な恋人達のために
ウグイスは心に染み入る歌を歌うから


ドビュッシー最初期の歌曲作品は、中期以降の独特の浸り込むような強烈な色合いはありませんが、逆に繊細なガラス細工のような美しさが魅力的です。このスタイルで映えるのはやはり春を描写した歌、まだ早春の肌寒い中から、かすかに春の香りが漂ってくるといった風情が実に良いです。残念ながらこの曲、この美しさにも関わらずドビュッシー歌曲集のなかに取り上げられることは非常に少ないようで、私が聴いたのもEMIの全集にあるマディ・メスプレのコロラトゥーラ・ソプラノのみです。もっとも私は、この人の絹擦れのような声が好きなので、この録音は結構気に入っています。
最近EMIから3枚組で、メスプレの入れたフランス歌曲(アーン、プーランク、サティ、ドビュッシー、フォーレ、ルーセル)を集大成したやつが廉価で出ているようですので、ぜひお聴き下さるとよいと思います。この曲も素敵ですし、なかなか聴けないルーセルの歌曲や、サティ演奏の一時代前の第一人者、アルド・チッコリーニを伴奏者に迎えたサティの歌曲(ゆったりしたテンポのJe teux vousが渋い)、そして何よりアーンの歌曲集が絶品です。

( 2001.03.26 藤井宏行 )


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