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素晴らしき悪女    
 
 
    

詩: 永田文夫 (Nagata Fumio,1927-2016) 日本
      

曲: 武満徹 (Takemitsu Touru,1930-1996) 日本   歌詞言語: スペイン語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
泣くの 泣くの しあわせ求めて
わたしのプエルトリコの大地よ
常夏の太陽で一杯の
もはやお前の栄光も失われた
心よ 歌って 心よ
そして与えておくれ 過ぎ去った自由を

(詞は大意です)

武満のうたは、映画や舞台にかけるために作られたものが多いですが、面白いのは日本の舞台や映画であるにも関わらず、日本語以外の詞がついたものが結構あるということ。しかもそれら詞のすべてが日本人の手になったものだというのも面白いところです。ドイツ語で歌われる「Walz」(詞:岩淵達治・1966映画「他人の顔」)、フランス語で歌われる「雪」(詞:瀬木慎一・1963映画「白と黒」)も素敵ですが、やはり一番インパクトのあるのはこのスペイン語で歌われる「素晴らしき悪女」でしょう。今や都知事となった石原慎太郎の小説「明日に船出を」を映画化した作品「素晴らしき悪女」の主題歌としてラテン音楽評論家の永田文夫によって詞が付けられ、映画ではトリオ・ロス・アミーゴスがタイトルバックで歌っているという作品。主人公の青年がプエルトリコ人であるという設定からか、歌詞は懐かしいプエルトリコへの望郷の想いをぶつける歌になっています。が、音楽はバリバリのアルゼンチンタンゴ。まるでアストル・ピアソラが書いたかのようなモダンタンゴです。
スペイン語で歌うという制約のためか日本の歌手で取り上げている人は少なく、私の知る限りではメゾソプラノの保田由子さんが、寺島陸也さんの目の覚めるようなピアノ伴奏にのせて叫ぶように歌った鮮烈なものしかありません。武満のうたをほぼ全曲録音しているドミニク・ヴィスの録音は、この人の持ち味もあってかしみじみとした哀感が漂って、これもとても素敵です。

( 2005.02.11 藤井宏行 )


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