ぽつねん |
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詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
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武満さんの「白鳥のうた」と言えるこの最晩年の作品は心にぐさりと刺さってくるブルースでした。昔は日雇い労働者とか受験生とか酒場の女とか、ブルースの題材にも事欠かなかったようですが、今の日本でブルースにできるような重たいテーマを選ぶとすればこの曲で谷川俊太郎さんが書いたような情景に止めを刺すでしょう。「もういいかい まだだよ」と子供の遊びのフレーズをも効果的に使いながら戦慄的な情景をさりげなく歌います。
(それが何か?のネタばらしはここではしないでおきます。未聴の方は私同様聴いて戦慄を覚えてください)
同じ谷川&武満コンビにはまだ若いころにやはりかくれんぼ遊びをうまく織り込んだ「恋のかくれんぼ」
(1961)という可愛らしい曲もありますが、それから30余年、何と日本は変ってしまったのでしょう...
凄すぎる歌のためかほとんど録音はなく、この曲を献呈された小室等さんのものか、あるいは英語で歌われたドミニク・ヴィス盤しかまだないと思うのですが、いずれも鮮烈です。
小室さんのは武満が亡くなってまだ間もないころの録音で、まだこの曲を十分に消化しきれていないきらいもあり、今再録音したらもっと素晴らしいだろうとは思いますが、それでもこの曲の凄さは十分に伝わってきます。湧き出してくる怒りとやるせなさが。
逆にドミニクのは息が止まるような遅いテンポで淡々と歌うことで、絶望の淵におちるかのような恐ろしさが聴きもの。
「もういいかい」のところのブルーノートなど氷の刃で突き刺されるかのようです。
実は最初にこの曲の凄さに気付かされたのはこちらで、それから小室さんのを聴き直して私はすっかりこの曲にはまったのでした。
このドミニクのような解釈で日本語で歌われたものも是非聴いてみたいと思うのですが、保田由子さんがこの曲を録音しなかったのが大変残念です。誰かチャレンジしないでしょうかね。加藤登紀子さんとかがやってくれると凄くいいものができるかも...
( 2005.02.11 藤井宏行 )