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死んだ男の残したものは    
 
 
    

詩: 谷川俊太郎 (Tanikawa Shuntarou,1931-) 日本
      

曲: 武満徹 (Takemitsu Touru,1930-1996) 日本   歌詞言語: 日本語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください


武満徹が残したうたの中で恐らく一番有名なものでしょう。反戦歌の名曲として色々な人がカヴァーしています。初演は1965年、ベトナム戦争に反対する市民集会の中で友竹正則によって歌われた、と記録にはあります。男が残したのは妻と子供。そしてその妻も死んでひとりの子供が残り、そしてその子供も戦争で死んでしまう...みんな何も残さなかった。
3番の詩の「死んだ子供の残したものは ねじれた脚と乾いた涙」というフレーズは、子を持つ親としては思わず戦慄を覚えます。それでも最後には生き残った人たちの希望が歌われるのは救いでしょうか。谷川俊太郎の詩も実に冴えています。
そんなこの歌では、まだ市民運動や反戦に対する熱気が伝わってくる70年代に活躍したフォーク歌手の録音、例えば森山良子さんや高石友也さんなどの歌が良いように思います。その流れで武満ソング集の中の小室等さんの歌も、歌うというよりは詩を語る、という感じで私にはとても面白く聴けました。

クラシック系では、ギターソロの静かな伴奏にのせて抑えた感情でつぶやくように歌うのが逆に悲しみをぐっと引き立たせる保田由子さんの録音も非常に印象的なのですが、ここは武満徹氏自らピアノ伴奏編曲を監修したという地引憲子さんの94年サントリーホールライブ録音を(編曲は彼女自身されたそうです)。
この人、ちょっと声や歌い方に癖があって苦手な人は多いのではないかと思いますが、繰り返し聴くとハマる人はとことんハマれそうです。私も初めて聴いたときはあまりの癖の強さに「こりゃあかんわ」と思ってしまったのですが、CDを繰り返し耳にするうちに段々と良さを感じるようになってきました。日本語でシューベルトの歌曲を歌うリサイタルを開くなど日本語のうた、に対するこだわりを持っている数少ない歌手のひとりなのだそうで、一度ライブで聴いてみたいものです。
こちらは重々しいピアノ伴奏を渕上千里さんが力強く弾く上で、心にびんびん響いてくる言葉の情感を込めてゆったりと歌います。武満自身の監修が入ったからというわけではないでしょうが、伴奏の編曲の素晴らしさは随一。
この録音、武満ソングからはこれを含めて10曲と少ないですが、彼女が非常に美しい編曲を施した黒人霊歌集から6曲ほど聞けてなかなか良いです。ただちょっと彼女の英語の歌には日本語のときほど共鳴できないこともあって、できればこちらも含めもっと色々な人にこの地引さんの編曲は取り上げてもらいたいものです。

( 2005.02.11 藤井宏行 )


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