工業の歌 |
|
機械手作り様々に 世の工業は多けれど 先ずさし物を始とし 鋳物塗物細工物 是につづきて焼物は 人間必須の道具なり 鍋と釜とは鋳物にて 箪笥火鉢はさし物ぞ 茶碗皿鉢瓶土瓶 伊萬里七寶九谷焼 皆焼物の内なれど 茶碗の類を瀬戸といふ さて塗物は萬国に たぐひなし地や高蒔繪 らでんの類は美術品 その他膳椀箱枕 日用品を數ふれば 秋の千草にことならず なほも編物革細工 絹麻木綿毛織物 ガラス造るも紙すくも ほり物するも傘張るも 皆大切の工業ぞ かせぐは身の爲國の爲 勉め励めや人々よ めぐる車に苔つかず 走る水には氷なし 二度と又來ぬ青年の 時をすごすな徒に |
|
漁業の歌と同じ「新選国民唱歌」(明治34年)に載せられています。国会図書館のデジタルライブラリーで見ることができました。まだ鉄や化学・機械などの産業は草創期ということでしょうか登場せず、もっぱら日用品を作る職人の世界の歌になっているのが興味深いところです。
( 2017.06.03 藤井宏行 )