五木の子守歌 わがふるさとの歌 |
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おどま盆ぎり 盆ぎり 盆からさきゃ おらんと 盆がはよくりゃ はよもどる おどんが打死んだば 道端てゃ いけろ 通る人ごち 花あげる 花はなんの花 つんつん椿 水は天から 貰い水 おどまかんじん かんじん あんひとたちゃ よかし よかしゃ よか帯 よかきもん |
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この有名な唄の編曲者福島雄次郎氏は鹿児島在住で、南九州や沖縄を題材にした素敵な音楽をいろいろ書いています。合唱をされる方には「南島歌遊び」や「美しき南の島の歌」などの作品でおなじみでしょうか。関さんの歌う日本民謡集(Philips)でも「わがふるさとの歌」として、そこから「刈干切唄(宮崎)」・「子守女の唄(熊本)」・「おざや節(熊本)」・「木挽唄(熊本)」、そしてこの「五木の子守唄(熊本)」と南九州の民謡の編曲を取り上げています。
ここで歌われている「五木の子守唄」ですが、私が聞き覚えている有名な旋律とだいぶ違ってもっと訥々というか、素朴なものです。調べてみるとこの歌が有名になったのは古関裕而氏が採譜・編曲し、NHKのテレビ番組で1952年からそれが繰り返し放送された、というのが大きいようです。確か藍川由美さんの録音した古関歌曲集で聴けるのがそのおなじみのメロディだったのと、五木村のホームページにある「正調五木の子守唄」のメロディがそれとはかなり違うことなどからも、民謡によくみられる様々なバリエーションのうちのひとつだけが古関氏らの手によって世に知られるようになった、というのが真相でしょうか。未聴ですが「五木の子守唄の謎」というようなCDもあってこの古関版ほか様々な録音が聴き比べできるようなので、あるいはこれを見れば分かるのでしょうか。
それはさておき、関さんの録音で紹介されているこの歌を取り上げることでこの歌の歌詞を改めてじっくりと見る機会を得たのですが、戦慄を覚えるほどの自棄的な詞ですね。生活が恐ろしく厳しかったといわれる五木の庄。まだいたいけな子供にまでこんな歌を口ずさませるというのは今のわれわれには想像も付かないのではないでしょうか。
余計なお節介ではありますが以下に標準語訳を。
わたしは盆までの約束だから
盆からさきにはいなくなるよ
もし盆がはやくきたなら はやくかえる
わたしが死んだなら
道端に埋めて
そうしたら 通る人が
花を手向けてくれるでしょう
花はそう、椿の花を手向けてくれれば
水は空からもらうからやらなくてもいい
わたしは乞食者
あのひとたちは金持ち
金持ちは良い帯と良い着物
( 2005.01.12 藤井宏行 )