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忍路高島(おしょろたかしま)    
 
 
    

詩: 日本民謡 (Minyou,-) 
      

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


忍路高島(おしょろたかしま) 及びもないが
せめて歌棄(うたすつ) 磯谷(いそや)まで



昨年もたくさんの歌を聴いてきましたが、その中で一番凄い!と感動したのは関定子さんの歌う日本の民謡集でした(Philips「郷愁〜ソプラノによる日本民謡」 PHCK-101)。もともと日本の歌曲には定評のある人ですがこの日本民謡集における歌声はまさに圧巻、最初から最後まで圧倒されまくりでした。彼女と伴奏の塚田佳男氏のコンビによる録音の中では最高の1枚ではないでしょうか。中でも白眉は山田耕筰が編曲した「箱根八里」とこの「忍路高島」。いずれも追分調のゆっくりと唄い込むような曲で、およそクラシックの歌唱とは遠いところにある音楽だと思うのですが、彼女の歌で聞くとあまりにハマりすぎていてこちらがオリジナルでは?とさえ思うほどです。特に「忍路高島」は彼女の故郷・北海道の民謡なのだそうで(「江差追分」の1バリエーションなのだとか)、ベルカントの発声でありながら、そこかしこに見せる日本民謡調のコブシが見事に決まっていて全然違和感がありません。

忍路・高島は積丹半島の小樽の近く。かつてニシンの漁場として有名だったところだそうです。そこに働きに行く男たちを追って行きたくても、当時女の人の渡航は禁じられて行くに行けない。せめてその途中の歌棄・磯谷(渡島半島の日本海側、江差と小樽の中間あたり)までは見送って行きたい、と別れ別れになる恋人の思いを歌に託します。下手な恋歌よりももっと切々として心に響きますが、それはまさに関さんの至芸でしょうか。声の力も絶妙です。

同じ山田耕筰作品でも「松島音頭」は聴いていて笑ってしまう私ですが、やはり元が民謡として磨き抜かれたものだとちゃんと歌えば凄い効果が上がるものだ、と痛感してしまいました。日本の歌と日本語と、そしてクラシックの発声との関係を考えるときには、このような日本民謡の編曲ものをどう歌うか?というのはひとつの試金石になると思うのですが(そしてどう編曲するか&伴奏するか?も)、ここに名を連ねている6人の作曲家(坂本良隆・山田耕筰・石井歓・藤井清水・福島雄次郎・間宮芳生)の編曲と、そして関さんと伴奏の塚田佳男さんは実に見事なひとつの答を出してくれたのではないかと思います。日本歌曲に関心のある方はぜひご一聴を。私のようにノックアウトされること請け合いです。

相川おけさ (坂本良隆)
山中節 (石井歓)
やんせやんせと (藤井 清水)
五木の子守歌 (福島 雄次郎)
子守歌 (間宮 芳生)

1927年の編曲で、テノール歌手の藤原義江に捧げられ、彼によって初演されたのだそうです。のちの1942年ごろにピアノに加えてフルートのオブリガートのついた版を別に書いています。

( 2005.01.12 藤井宏行 )


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