市場帰り 宮沢賢治・三章 |
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白と黄いろの水仙を かついで来るのは詮之助 やあお早う あたまひかって過ぎるのは 枝を杖つく村老ヤコブ やあお早う お天気ですな 並木の影のだんだらを 犬めが黄いろに走って行く いやあお早う 朝日のなかから かばんをさげたこどもらが みんな叫んで飛び出してくる |
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山田一雄による宮沢賢治の詩に付けた歌。その第2曲目はこれも詩集「春と修羅」にある「市場帰り」から(1955作曲)。ただこの詩、調べてみるとこの曲に付けられた歌詞とずいぶん違います。どうもこの曲の方は賢治が改訂を施す前の詩に付けられているようですが、確かにこの版の方がリズムが良くて歌にはしやすいような。沖縄音階を思わせるような快活なリズムのピアノ伴奏と共に市場での人の賑わいを描写する、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」みたいな3曲の中でも一番印象的な歌です。「やあお早う」のところはマーラーの歌曲の雰囲気が入っているような(「子供の不思議な角笛」のムード全開!)...
最後の子供たちが出てくるところは輝かしく終わります。鮫島さんとドイチュさんの資質には3曲の中でも一番合っているような感じで、圧倒的な表現で聴かせてくれます。
一応下に最終稿も挙げておきますので比べてみてください
雪と牛酪(バター)を
かついで来るのは詮之助
やあお早う
あたまひかって過ぎるのは
枝を杖つく村老ヤコブ
お天気ですな まっ青ですな
並木の影を
犬が黄いろに走って行く
お早うよ
朝日のなかから
かばんをさげたこどもらが
みんな叫んで飛び出してくる
( 2005.01.01 藤井宏行 )