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星めぐりの歌    
 
 
    

詩: 宮沢賢治 (Miyazawa Kenji,1896-1933) 日本
    双子の星  

曲: 宮沢賢治 (Miyazawa Kenji,1896-1933) 日本   歌詞言語: 日本語


あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の つばさ
あをいめだめの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。

オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。

大ぐまのあしを きたに
五つのばした ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。



「風の又三郎」や「注文の多い料理店」などの童話で知られる宮沢賢治は、自らの童話のために書いた歌に曲を付けており、そのいくつかは今でも聴くことができます。
自分で作曲するだけでなく賛美歌のメロディを借用したり、面白いのはドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」の有名な第2楽章のメロディに付けた「種山ヶ原」という曲などもありました。

この曲は正真正銘の自作のようで、童話「双子の星」でチュンセ童子とボウセ童子という双子の星が、銀の笛を吹きながら次々と空の星座を巡っていく歌です。
もちろん彼は作曲に関してはアマチュアですからメロディや技巧で唸らされる、といった類の歌ではありませんが、素朴なメロディはなぜか忘れがたい郷愁を呼び起こさせます。
イメージとしては小林旭さんの歌った「北帰行」(ってこちらもご存知ない方の方が多いかな。これもゆったりとしたリズムでしみじみ歌われる名曲です)。クラシック歌手が歌うよりも演歌系の人が歌う方がしっくりくるような曲でしょうか。

なぜか若手のソプラノ、鈴木慶江さんが入れているアルバムが最近出ましたが、ちょっと編曲が厚化粧に過ぎて私には今一つでした。歌は魅力的ですがギター入りの伴奏がうるさ過ぎ。ポップスの編曲とはかくあるべし、という思いこみにはまって曲の味わいを壊してしまった典型のような感じです。
私の手持ちのアルバム「星めぐりの歌」(ITOON)は宮沢賢治歌曲集ということでこの歌の他にも「種山ヶ原」など含め作品をいろいろ聴かせてくれて面白いのですが入手は難しいかも。これは榊原光裕氏による編曲の伴奏もおとなしめですし、10歳くらいの女の子が歌うのも味わいがあって良いです。最初のトラックにオカリナで銀の笛を模した、インストメンタル版の星めぐりの歌が入っているのも嬉しいオマケ。

未聴なのですが色々な意味で凄そうなのが、元YMOの細野晴臣さんが編曲・プロデュースして、裕木奈江さん(最近どうしているのでしょうか?)が歌っている録音(Sony)。こういう取り合わせでどんなスタイルになっているのか興味津々です。

( 2005.01.01 藤井宏行 )


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