ワルツ |
|
詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
|
私はお前の顔を見つめる 私の前に立つお前の だがもう分からない お前なのかが どこなのだ お前は? どこにお前はいるのだ 昨日の お前は? 昔 霧の中でお前を見たときは まるで曇りガラス越しに立ってるようだった お前は近くにいるのに それなのに遠くにいるのだ 昔 月明かりの中でお前に会ったときは まるでガラスの肌をしているようだった お前は私に優しかった それなのによそよそしいのだ 昔 春に考えたときには お前は私のもので 私の 私たちはひとつだった そう 心の底から 昔 庭で私が別れを告げたとき それでも感じてた お前はそばにいると たとえ私たちが 別れなければならなくても ずっと長いこと私は忘れてしまっていた お前が突然私の他人となってしまうかも知れないことを 今お前の表情はこわばっている まるで別人の仮面をつけているように 昔 春に考えたときには お前は私のもので 私の 私たちはひとつだった そう 心の底から 昔 庭で私が別れを告げたとき それでも感じてた お前はそばにいると たとえ私たちが 別れなければならなくても 私はお前の顔を見つめる 私の前に立つお前の だがもう分からない お前なのかが どこなのだ お前は? どこにお前はいるのだ 昨日の お前は? (訳詞は大意です) |
安部公房の小説「他人の顔」を映画化した際のテーマ音楽にドイツ文学者でブレヒトの戯曲の翻訳などで知られた岩淵達治がドイツ語の詞をつけ、前田美波里によってビアホールのシーンで歌われたのだそうです。さすが独文学者、けっこうな分量の歌詞をそれなりに読み応えある内容で書いています。のちの2000年 同じ岩淵の手によって日本語の歌詞もつけられており、こちらで歌う日本人歌手もけっこうおります。同じ音楽に詰め込める欧米語と日本語の情報量は格段に違いますので、ここではもとのドイツ語詞から日本語訳を試みました。もっとも私のドイツ語力では大意を拾うのが精いっぱいですけれど。
( 2017.02.18 藤井宏行 )