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寄生蟹のうた    
  沿海三部作
 
    

詩: 萩原朔太郎 (Hagiwara Sakutarou,1886-1942) 日本
    青猫  

曲: 三善晃 (Miyoshi Akira,1933-2013) 日本   歌詞言語: 日本語


潮みづのつめたくながれて
貝の齒はいたみに齲ばみ酢のやうに溶けてしまつた
ああここにはもはや友だちもない 戀もない
渚にぬれて亡靈のやうな草を見てゐる
その草の根はけむりのなかに白くかすんで
春夜のなまぬるい戀びとの吐息のやうです。
おぼろにみえる沖の方から
船人はふしぎな航海の歌をうたつて 
拍子も高く楫の音がきこえてくる。
あやしくもここの磯邊にむらがつて
むらむらとうづ高くもりあがり 
また影のやうに這ひまはる
それは雲のやうなひとつの心像 
さびしい寄生蟹(やどかり)の幽靈ですよ。



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   沿海三部作 

( 2017.02.11 藤井宏行 )


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