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My Wife Is a Most Knowing Woman    
 
俺のカカアは何でもお見通し  
    

詩: クーパー (George Cooper,1840-1927) アメリカ
      

曲: フォスター (Stephen Collins Foster,1826-1864) アメリカ   歌詞言語: 英語


My wife is a most knowing woman,
She always is finding me out,
She never will hear explanations
But instantly puts me to rout,
There's no use to try to deceive her,
If out with my friends,night or day,
In the most inconceivable manner
She tells me where I've been right away,
She says that I'm ”mean” and ”inhuman”
Oh! my wife is a most knowing woman.

She would have been hung up for witchcraft
If she had lived sooner,I know,
There's no hiding any thing from her,
She knows what I do--where I go;
And if I come in after midnight
And say ”I have been to the lodge,”
Oh,she says while she flies in a fury,
”Now don't think to play such a dodge!
It's all very fine,but wont do,man.”
Oh,my wife is a most knowing woman.

Not often I go out to dinner
And come home a little ”so so,”
I try to creep up through the hall-way,
As still as a mouse,on tip-toe,
She's sure to be waiting for me
And then comes a nice little scene,
”What,you tell me you're sober,you wretch you,
Now don't think that I am so green!
My life is quite worn out with you man,”
Oh,my wife is a most knowing woman!

She knows me much better that _I do_,
Her eyes are life those of a lynx,
Though how she discovers my secrets
Is a riddle would puzzle a sphynx,
On fair days,when we go out walking,
If ladies look at me askance,
In the most harmless way,I assure you,
My wife gives me,oh! such a glance,
And says ”all these insults you'll rue,man,”
Oh,my wife is a most knowing woman.

Yes,I must give all my friends up
If I would live happy and quiet;
One might as well be 'neath a tombstone
As live in confusion and riot.
This life we all know is a short one,
While _some_ tongues are long,heaven knows,
And a miserable life is a husbands,
Who numbers his wife with his foes,
I'll stay at home now like a true man,
For my wife is a most knowing woman.

俺のカカアは何でもお見通し
俺の秘密なら何でも分かる
言い訳なんぞ聞いちゃくれない
たちまち大騒ぎにしてしまう
騙そうなんて無駄なこと
夜でも昼でも、仲間と出かけると
全然信用していないそぶりで
「どこへいってきたの?」と聞きやがる
「あんたはずるくて人でなし」だとさ
ああ!俺のカカアは何でもお見通し

魔女として首くくりの刑だったろうに
もう少しやつが早く生まれてたらな
何も隠し事なんぞできやしない
何をするのもどこへいくのもお見通しだ
もし俺が夜中に帰ってきて
「ロッジに行ってきたぞ」と言ったとしても
かんかんに怒って飛んできて
「ごまかそうたってだめ!
うまく言い抜けるつもりでも騙されないわ」だとさ
ああ、俺のカカアは何でもお見通し

めったにないが、外食をして
家に帰るときに、ちょっとばかり失敬して
廊下をそっと忍び足
ねずみのようにつま先立ちで捲こうとしても
カカアは必ず行く先で待っている
そしてそれからお決まりのシーン
「おれは真面目だとか言ってこのろくでなし
あたしが嫉妬深いなんて思うんじゃないよ!
あたしの人生はあんたのおかげで大変なんだよ」
ああ、俺のカカアは何でもお見通し

カカアは何でも知っている(俺よりも)
やつの目は山猫のように光る
どうやって俺の秘密を見つけ出すのか
それはスフィンクスでも解けない謎だ
天気の良い日に、夫婦で外に出かけ
他の女たちが横目で
いや、別にどうってことない様子でも俺を見ようもんなら
カカアは嫌味な目つきで俺を見る。必ずな
そして言うんだ「あいつらあんたを馬鹿にしてるよ。かわいそうに」
ああ、俺のカカアは何でもお見通し

ああ、俺はダチをみな諦めなくちゃいけない
静かで平穏な暮らしがしたかったらな。
墓石の下で静かにするのも
ごたごたの中で生きるのも大差ないとはいえ
この人生は短いが
小言だけはなぜか長い(こともある)
ダンナの人生はみじめだ
もし、カカアを敵に回したらな
俺はおとなしく、家にいることにした
俺のカカアは何でもお見通しだから...

リニューアル記念のアメリカ音楽特集に絡めてのフォスター探訪、とうとうこんな歌まで見つけてきました。
EMIに録音のあるフォスター歌曲集”American Dreamer”でトーマス・ハンプソンがカントリー風のピアノ伴奏でとても楽しそうに歌うこの曲、とても実感がこもっていて良いです。
訳が下手なのでカカアの嫌味な言葉がうまく伝わってこないのがもどかしいですが、この歌は是非紹介しなければ...(別に私が今家庭でこんな目に遭っているからではありません。念のため)

1863年ですから彼の最晩年の作品。試行錯誤的に色々なスタイルを試したうちのひとつなのでしょうか。歌詞も自作ではありませんし、彼の音楽に詩情を求める人はついて行けないかも知れないですが、けっこうフォスターも当時の流行作曲家として、南北戦争に絡んだ政治的な歌やこんなコミックソングも色々書いていますので、そのひとつとして目を向けてみるのは決して無駄ではないと思います。何より楽しいですし。
タイトルの” my wife is a most knowing woman”は、「お見通し」というよりは「嫉妬に駆られて何でも自分の思った筋書きに見えてしまう」という方が適切かと思うのですが、ぴったりくる簡潔な日本語が思い付きませんでしたのでこのタイトルにしています。安易に直訳して「私の妻は賢い女」とすると皮肉っぽい感じは良く出てきますが、歌詩を読まないとおノロケの歌と勘違いされる恐れがあり、難しいところです。

日本では、フォスターをはじめとするアメリカのこの時代の歌がほとんど学校教育絡みで伝えられたからでしょうか。あのベタベタのラブソング「モリーダーリン」(ウイリアム・ヘイス)でさえ美しい自然を愛でる歌になってしまったくらいなので、アメリカの歌のこういったくだけた側面がほとんど伝わっていないのはある意味残念なことかも知れません。
(もっとも学校教育で取り上げられていなければ日本人はフォスターなんて誰も知らない、ということになっていた可能性もありますので痛し痒しではありますが...)

この歌、もし「モンパパ」(うちのパパはうちのママに敵わない...)など昔の洋モノのコミックソングで絶妙の替え歌を聴かせてくれたエノケンこと榎本健一が知っていたら、きっと大喜びで取り上げたのではないでしょうか。もし日本でフォスターの歌をリヴァイヴァルさせる試みがあれば、ぜひ誰か歌心のあるコメディアンに取り上げてもらいたい作品ではあります。
とにかく楽しい歌。ハンプソンの歌うフォスターの作品集も、ブルーグラス&カントリーの演奏家たちをバックに、とても素敵な歌を聴かせてくれるCDですので、機会があればぜひ聴いて見てください。アイリッシュ・トラッドのようなフォスターの歌っていうのも実に新鮮!

( 2004.11.27 藤井宏行 )


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