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Swanee    
 
スワニー  
    

詩: シーザー (Irving Caesar,1895-1996) アメリカ
      

曲: ガーシュウイン (George Gershwin,1898-1937) アメリカ   歌詞言語: 英語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
長く離れてても
いつも忘れられぬ
なつかし
ふるさと
いつか、帰ろう

鳥は空に歌い
バンジョーは優しく鳴る
聞こえる
ふるさと
スワニーの呼び声

スワニー
恋しい恋しい
ふるさとよ
また会いたい友のいる
ディキシーの村よ
僕の
帰りを待ってる
かあさんのいるスワニー
この町よさらば
僕はいつか帰る

(一番のみ大意で訳しました。たぶんこれで歌えると思います)

ジョージ・ガーシュウイン弱冠21歳のときの作品。作詞家と2人で食後わずか20分足らずで書いたとかまことしやかに言われていますが本当のところはどうなのでしょう。作詞のアーヴィン・シーザーも「2人でお茶を」などのヒットを後に書いている大物ミュージカル作詞家の卵でした。アメリカ南部の小さな川、フォスターが「故郷の人々」で歌った望郷の想いを、彼らは弾けるような若さで表現しています。
主演したミュージカルショー「シンドバッド」に取り上げてこの曲を愛唱し、大ヒットに一役買ったスター歌手アル・ジョルスンの歌が復刻されていて、これが決定盤とも言える味わいに満ちていると思います(私が単に古い録音が好きなだけかも)。彼には何種類か録音があるようですが、知る限りで絶品と思うのが1937年、脳腫瘍で突然その生涯を閉じたガーシュウィンの追悼のためにロスアンジェルスで死の2ヶ月後に開かれたメモリアルコンサートから。作曲家ヴィクター・ヤング指揮のロスアンジェルスフィルハーモニックのバックに乗って、これ以上はないというような快速で歌われたものです。とにかくテンションが物凄い!。このコンサート、ラジオでの放送がそのままCDに復刻されていますが、ガーシュウィンゆかりの歌手フレッド・アステアやピアニストのオスカー・レヴァントなども参加し、大変豪華なコンサートになっています。当時ロスにいたオットー・クレンペラーが、ガーシュウィンの前奏曲の管弦楽編曲を指揮しているというレアもの録音(けっこうトンデモ系演奏かも)も含まれ、ガーシュウィンの音楽のファンの方は必携ではないでしょうか?

最近聴いて目から鱗の録音が、なぜかアルゼンチンのPISCITELLIレーベルから出ている「ユダヤの歌」というCDです(Eleonora Noga Alberti,soprano w.Alfredo Corral,piano)。ここでイスラエルの作曲家ベン・ハイムによるバリバリのヘブライ調の歌などに混じって収録されているこの曲、普通良く歌われる軽快なアップテンポでなく、フォークダンスでもできそうなスピードでゆったりと歌われます。フォークダンスというと思い出すのがイスラエル民謡で小学校の頃よく躍らされた「マイム・マイム」。なんとこの「スワニー」ゆっくり歌うとこのフォークダンスにそっくりの雰囲気を醸し出すのです。
ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」ででも使えそうな哀愁に満ちたそのメロディ。実はガーシュウインがその祖先の血を呼び覚まされて書いた作品だったのでしょうか。彼はロシア系ユダヤ人の移民の子だそうですからこのロシアの寒村のユダヤ人社会を描いた「屋根の上の」の世界とは非常に近いところの人なんですね。
ただ、彼の他の作品でこんな感じがするやつは他に思い当たりませんでしたのでひたすら興味深いです。「アイ・ガット・リズム」とか「ス・ワンダフル」なんて洗練された歌になってますし、「ポーギーとベス」の土俗感もユダヤの情緒とは別のものですから。

「Swanee ! You're calling me !」のところのパウゼなど、このダンスのフッと止まる「マイム・ベサソン」のところを思い起こさせて思わず笑みがこぼれます。どうぞこの「スワニー」のメロディーをご存知の方は思い切りゆっくりとしたテンポでメロディを口ずさんでみてください。この曲のルーツにユダヤの民謡が隠れていることがきっと妙に納得できると思います。

( 2004.11.21 藤井宏行 )


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