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A Real Slow Drag    
  TREEMONISHA
本当のスロー・ドラグ  
     オペラ「トゥリーモニシャ」

詩: ジョプリン (Scott Joplin,1868-1917) アメリカ
      

曲: ジョプリン (Scott Joplin,1868-1917) アメリカ   歌詞言語: 英語


TREEMONISHA

 Salute your partner,do the drag.
 Stop and move backward,do the drag.
 All of you stop.

 Look to your right and do the drag.
 To your left,that's the way.

TREEMONISHA and LUCY

 Marching onward,marching onward,
 Marching to that lovely tune;
 Marching onward,marching onward,
 Happy as a bird in June.
 Sliding onward,sliding onward,
 Listen to that rag.

 Hop and skip,
 Now do that Slow Drag.

 Dance slowly,prance slowly,
 While you hear that pretty rag.
 Dance slowly,prance slowly,
 Now you do the real Slow Drag.

 Walk slowly,talk lowly,
 Listen to that rag.
 Hop and skip,
 Now do that Slow Drag.
トリーモニシャ

 パートナーとあいさつして、さあドラグを踊りましょう
 止まって、後ろに下がって、さあドラグを踊りましょう
 みんな、さあ止まって

 右を見て、ドラグを踊りましょう
 左を見て、同じようにね

トリーモニシャとルーシー

 前に進んで、前に進んで
 このすてきな調べに合わせて
 前に進んで、前に進んで
 6月の小鳥のように幸せに
 横に動いて、横に動いて
 このラグを聴きながら

 ホップ、アンド、スキップ
 ほら、これがスロードラグよ

 ゆっくり踊って、ゆっくり跳ねて
 このすてきなラグを聴きながら
 ゆっくり踊って、ゆっくり跳ねて
 ほら、これがほんとのスロードラグよ

 ゆっくり歩いて、静かに話して (このあと合唱も入る)
 このラグを聴きながら
 ホップ、アンド、スキップ
 ほら、これがスロードラグよ

ジ・エンターテイナーやメイプル・リーフ・ラグなど、1910年代に素敵なピアノラグの名曲をたくさん書いた黒人作曲家スコット・ジョプリンの夢はオペラを書くこと。
そんな彼の作品「トリーモニシャ」は、まずしい孤児の娘トリーモニシャが黒人たちの中にはびこっていた迷信を打ち破り、新たな時代へと歩み出していくお話です。
ここで紹介したのはそのラストシーン、ゆったりとしたラグのメロディ(これはドラグというらしい。足を引き摺るように踊る踊りのようです)で、仲間たちと一緒に歌い踊りながら幕となる印象的な場面です。

ジョプリンはこの作品を上演するために非常な努力をしたのだそうですが、当時は黒人の舞台作品を取り上げてくれるような物好きな興業主などおらず、結局は自費で上演したのだとか。
しかしながらこの舞台を見に来られるような比較的裕福な中流の黒人層には黒人の孤児の話はウケが良くなく大失敗に終わった、と歴史にはあります。
当時既に病を得ていた作者は失意のうちに亡くなってしまいました。

その後この作品は長く葬り去られ、再演はなんと1975年、ヒューストングランドオペラで行われたもので、私の知る限りはこの時収録されたもの(DG)が唯一の録音です。

たしかにジョプリン自作の物語は少々稚拙なところも感じられますが(小学校の学芸会みたいな筋ではある)、そこに付けられた音楽はすばらしく、中でも輝く未来に向かって歩み出すこのエンディングの音楽は感動的です。
アフロアメリカンのための、アフロアメリカンが演じる舞台作品としては、有名なガーシュウインの「ポーギーとベス」がありますが、あちらのブルースに満ち溢れたほの暗い世界と、そして軽快で華やかなこの「トリーモニシャ」のラグタイムの世界。どちらも1900〜30年代のアメリカの財産として味わってみる価値はあると思います。

( 2004.11.21 藤井宏行 )


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