TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Why do I love you?    
  Show Boat
Why do I love you?  
     ミュージカル「ショウ・ボート」

詩: ハマースタインU世 (Oscar Greeley Clendenning Hammerstein II,1895-1960) アメリカ
      

曲: カーン (Jerome Kern,1885-1945) アメリカ   歌詞言語: 英語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
なぜ君を愛するのだろう
なぜ僕を愛してくれるのだろう
この世に僕らほど幸せな2人がいるだろうか?
どうしてこうなったのだろう
お互い惹かれ合うようになったのは

君は幸運な娘
僕も幸運だ
夢がみなかなった気がするのは
ニ人に愛があるから


(詩は大意です)

アメリカ特集を始めてから、なぜか往年の名歌手の追悼が続いてしまいました。1950年代のミュージカル映画には欠かせない存在として、先日亡くなったハワード・キールは「キス・ミー・ケイト(コール・ポーター1953)」や「アニーよ銃を取れ(アービン・バーリン1950)」、そしてこの「ショウ・ボート(ジェローム・カーン 1951)」などに主演していますが、もはや往年のクラシック映画やミュージカルのファンでもないと名前を知らない人になってしまっているのでしょうか。キザでにやけた男前の役としてはピカイチの貫禄を持った人でした。そしてクラシカルなミュージカル作品にはそんな役どころの人は欠かせません。本当に華のある人でした。

そんな彼の追悼としては、私の大好きな1927年作のミュージカル「ショウ・ボート」の1951年MGM映画から、これまた一番好きなデュエットのナンバー「Why do I love you」を取り上げます。
キールの役はミシシッピを渡り歩く演芸船の娘マグノリア(キャサリン・グレイスン)と恋に落ちる遊び人の青年ゲイロード、このミュージカル、恋して結婚してめでたしめでたしではなくて、その後の経済的な苦境(バクチが止められないダンナ)と家族との別れ、そして再開とを、狂言回しの黒人の召使ジョーの歌う名曲「O'l man river」の名フレーズ「河はなんでも知っている でも何も言わずに ただ流れていくだけ」をそこかしこに織り込みながら描くアメリカ版大河ドラマ(まさに言葉通りの大河ミシシッピを舞台にして)です。

この歌はそんな将来の苦難を微塵も感じさせない幸せ一杯の可愛らしい歌。第2幕のはじめに新婚ほやほやの甘い幸せを歌います。
実はこの前第一幕の終わりにもっと壮麗な愛のデュエットがあって、夜空の下のラブシーンがぐぐぐっと盛り上がるので、そちらに比べるとちょっと霞んでしまうのがもったいない歌ではあります。
私がかつて見たハロルド・プリンス演出の実際の舞台では、そこのところをうまく回避して、この曲を生まれたばかりの2人の間の娘を祖母が抱いてその子に語りかける子守歌にしていました。これが実に素敵で、これから彼らにやってくる苦難の前の束の間の幸福をしみじみと歌います。(トロントで上演された同じプロダクションのCDが廉価で手に入りますのでご興味おありの方はどうぞ)

You are lucky girl
I am lucky too...
All our dreams of joy
seem to come true.

1951年MGM映画、名作の誉れ高い1936年製の同じ作品には及ばないとの評価もありますが、ミュージカル映画としては成功している方ではないかと思います。すべてを包み込むような暖かいマグノリアの父キャプテン・アンディの笑顔がとても素敵。
(もともとリアリティを表現する映画に、ミュージカルみたいな非現実的なものを織りこむのは非常に不自然ですからハンデは大きい)
ショウ・ボート、EMIにアメリカのクラシック畑の名歌手とミュージカルの名歌手とを取り揃えて録音した1988年の録音があり、上演ごとの異稿もいろいろ織り交ぜた3枚組の資料価値も高いCDでした。ここではクラシック界でもミュージカルの名手として活躍しているジェリー・ハドレーとフレデリカ・フォン・シュターデのデュオ。非常に抒情的でこれもなかなか良いです。ショウ・ボートの名曲はいずれ特集したいですね(オスカー・ハマースタインの著作権が切れる2021年以降にでも。それまで続けているだろうか?)

( 2004.11.11 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ