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Why No One to Love?    
 
誰も愛さないの?  
    

詩: フォスター (Stephen Collins Foster,1826-1864) アメリカ
      

曲: フォスター (Stephen Collins Foster,1826-1864) アメリカ   歌詞言語: 英語


No one to love in this beautiful world,
Full of warm hearts and bright beaming eyes?
Where is the lone heart that nothing can find
That is lovely beneath the blue skies;
 No one to love!
 No one to love!
 Why one to love?
What have you done in this beautiful world,
That you're sighing of no one to love?

Dark is the soul that has nothing to dwell on!
How sad must its brightest hours prove!
Lonely the dull brooding spirit must be
That has no one to cherish and love.
 No one to love!
 No one to love!
 Why one to love?
What have you done in this beautiful world,
That you're sighing of no one to love?

Many a fair one that dwells on the earth
Who would greet you with kind words of cheer,
Many who gladly would join in your pleasures
Of share in your grief with a tear.
 No one to love!
 No one to love!
 Why one to love?
Where have you roamed in this beautiful world,
That you're sighing of no one to love?
この素晴らしい世界に誰も愛する人がいないなんて
暖かい心と優しいまなざしに満ちているのに
誰もみつけられないさびしい心の持ち主はどこ
この青空の下、愛する人を
 誰も愛さないの!
 誰も愛さないの!
 どうして誰も?
この美しい世界でしていることは
ただ誰も愛せないと溜息をつくことだけ?

誰も愛する人のいない心の中は暗い
一番輝かしいはずの時さえも悲しい
さみしい、活気のない魂にちがいない
愛し、惹かれる人がいない心は
 誰も愛さないの!
 誰も愛さないの!
 どうして誰も?
この美しい世界でしていることは
ただ誰も愛せないと溜息をつくことだけ?

すてきな人がこの地球にはたくさんいる
元気付けるやさしい言葉をかけてくれて
あなたがうれしい時には共に喜び
あなたが悲しい時には涙を流してくれる人がいるのに
 誰も愛さないの!
 誰も愛さないの!
 どうして誰も?
この美しい世界でしていることは
ただ誰も愛せないと溜息をつくことだけ?

今回のアメリカ特集のためにフォスターのことをいろいろ調べている中で、とっても素敵なCDアルバムを見つけました。
2004年の8月にアメリカでリリースされたもののようですが、彼の名曲をカントリーやゴスペル、ジャズなどの歌手たちが様々なスタイルで現代風にトリビュートした作品です。
CDの紹介によれば「アメリカでヨーロッパの伝統音楽と黒人の音楽とを初めて融合させた魅力的な歌をたくさん残したフォスターを、アメリカポピュラーミュージックのパイオニアとしてしっかりと振り返る」ことを意図して企画されたアルバムであるとのこと。中には音楽をいじり過ぎて失敗しているものもありますが、「草競馬」や「ケンタッキーの我が家」「やさしきネリー」など、彼の魅力的な代表作が普段聴かれるロジェ・ワーグナーやロバート・ショウ合唱団のほのぼのスタイルではなく、現代に生きるポピュラーソングとして見違えるように素敵にアレンジされているのを聴くのは大変楽しい経験でした。
中でやはり新鮮だったのはフォスターでもあまり知られていない作品。原曲を普通知らないだけに歌の持ち味そのもので勝負ですが、その中でもうならされたのがブルーグラスの女性歌手ジュディス・エデルマンが歌ったこの曲。ホイットニー・ヒューストンでも歌っていそうなお洒落なバラードになってしみじみと聴かせてくれます。この曲、1862年、フォスターがヒット作を書けずに苦しんでいたと言われる晩年の作品で、当然というべきか私の知る限りどのフォスター歌曲集・合唱曲集録音にも取り上げられていない非常に珍しい作品ですが、改めて詩やメロディをじっくりと見ると現代にも通じる素敵なポップスに化ける歌のような気がしましたし、事実そうなりました。この曲をこんな風にリプロデュースしたすべての人に感謝。失恋をひとり噛み締めているような心境が、スローなワルツでひたすら切なく歌われるのは聴きものです。
200曲も書いたフォスターのこと。掘り起こせばこんな素敵な曲がまだまだたくさん眠っていることでしょう。

   http://ubl.artistdirect.com/store/artist/album/0,,3013212,00.html

 ここで全曲、それぞれ一部分が試聴できますのでご興味のおありの方はどうぞ。また原曲はMIDIであちこちのパブリックドメインで耳にすることができます。編曲の妙を味わうのに比較するのも一興かと(MIDIで聴くと味もそっけもないただのワルツですが)。
    http://www.pdmusic.org/foster.html (たとえばここなどで聴けます)

日本でも、服部良一メロディなんかは「日本の歌謡曲と欧米のジャズ・ポップスを融合させたパイオニア」として若手ミュージシャンによるこんな感じのトリビュートアルバムが作られると良いですね。妹の服部富子は彼の上京を応援するときに「お兄ちゃんは日本のベートーヴェン」と励ましたのだそうですが、私が感じるに彼こそ「伝統歌謡と洋楽のエッセンスを見事に融合した日本のフォスター」ともいうべき人だと思っています。クラシック畑であっても既に先人が確立した様式にただ従った陳腐な歌をたくさん書いている一部の人の作品なんかよりもよほど新鮮で、間違いなく100年後の日本のクラシックになる資格十分でしょう(私たちがちゃんと後世に残す努力をすればという条件はありますが...)。このフォスターのアルバムで150年前の音楽が生き生きと再現されるのを聴くにつけそんなことを思ってしまいました。
と、大脱線してしまいましたが、日本の歌謡史も調べるといろいろ面白いことがあるのでいずれ詳しくやってみたいものです。実は服部良一が活躍した時代(とその少し前くらいの1920〜1940年代)は一番流行歌とクラシック音楽の重なりが大きかった時代としてこのサイトでももう少し目を向ける価値があるのではないかと思っているのです。音大出の流行歌手を輩出していたのもこの時代ですし、歌謡曲でヒットを飛ばした人がその後オペラ界で活躍したり...(今は芸大出の人のポップス界への進出は器楽畑の人ばかり目立ちますね。それはそれで面白い傾向ですが)

( 2004.11.03 藤井宏行 )


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