America the Beautiful |
すばらしきアメリカ |
O beautiful for spacious skies, For amber waves of grain, For purple mountain majesties Above the fruited plain! America! America! God shed His grace on thee, And crown thy good with brotherhood From sea to shining sea! O beautiful for pilgrim feet Whose stern impassion'd stress A thoroughfare for freedom beat Across the wilderness. America! America! God mend thine ev'ry flaw, Confirm thy soul in self-control, Thy liberty in law. O beautiful for heroes prov'd In liberating strife, Who more than self their country loved, And mercy more than life. America! America! May God thy gold refine Till all success be nobleness, And ev'ry gain divine. O beautiful for patriot dream That sees beyond the years Thine alabster cities gleam Undimmed by human tears. America! America! God shed his grace on thee, And crown thy good with brotherhood From sea to shining sea. |
おお素晴らしきこの広い空 琥珀色にたなびく麦の穂 青く霞む山の峰は この豊かな野の向こうに アメリカ! アメリカ! 神はその恵みをこの国に与え給うた そして兄弟愛を良き冠として 海から輝く海まで授け給うた! おお、素晴らしき清教徒の足跡 その厳格なる熱意と努力は 自由を求める道を切り開く 荒野の中を横切って アメリカ! アメリカ! 神はその弱きところを助け その精神を自立へと導き 自由を法となされた おお、素晴らしき英雄たちよ 自由を求める闘いの中で 己よりも国を愛し 己が命よりも慈愛を選んだ アメリカ! アメリカ! 神がその素晴らしさをさらに磨き 成功が尊いものになりますように そして得られるものがすべて神聖でありますように おお、素晴らしき愛国者の夢 はるか先の時代を見とおし 白亜の町の明かりは 人々の涙で曇らされることはない アメリカ! アメリカ! 神はその恵みをこの国に与え給うた そして兄弟愛を良き冠として 海から輝く海まで授け給うた! |
アメリカを代表するバリトン歌手、ロバート・メリルが先日大往生を遂げました。80歳を越える高齢でしたので、主に活躍していたオペラの世界でも全盛期は1950〜60年代ということもあってか最近の音楽ファンにはなじみがないのと、いわば名脇役としてならしたような人なので熱烈なファンが少ないからでしょうか、あまり日本ではネット上でも話題にならなかったようで寂しい限りです。
彼のRCAやEMIに録音したオペラ群は、私が学生時代に廉価盤でオペラのレコードを買っていたころには大変お世話になったものばかりで、彼の歌うエスカミーリョや父ジェルモン、アルフィオやマルチェルロなどの歌声には大変懐かしさを感じます。
さて、彼の訃報ではアメリカの歌手として、大リーグ・ヤンキースの開幕戦で30年間アメリカ国歌を歌っていた、というのが履歴として大々的に紹介されていました。そこで現在進行中のアメリカ特集に絡めて1曲取り上げることにします。ただここでそのアメリカの国歌「星条旗」を紹介するのもあまりに芸がないので、彼がDeccaにスタンリー・ブラックの伴奏で歌ったアメリカの愛国歌集からとても印象的なアメリカ第2の国歌とも言える「America the Beautiful」を紹介して彼への追悼としましょう。荘重なオーケストラの伴奏に乗って張りのある美しい声で歌ってくれています。
世界貿易センターへのテロがあった2001年、愛国的な機運の高まりと共にアメリカではこの歌を取り上げる頻度が激増したようです。アメリカのポピュラー歌手たちも昔からこぞって取り上げている曲で、あのシナトラのものもありますし(2001のテロ追悼アルバム中にも収録されていた)、ウィリー・ネルソンやエルヴィス・プレスリーなどの録音もあります。賛美歌のような美しいメロディなのは曲が元は賛美歌「Materna」という歌であり、詩があとから付けられたためです。
詩の作者キャサリン・ベイツ(1859-1929)は大学の先生だったのだそうですが、1895年に友人たちとコロラド州にある高山パイクス・ピークへの旅をしたときに、そこで見た美しい風景に触発されてこの詩を書きました。雑誌に発表されたその詩が大いに受け、様々なメロディに乗せられて歌われた中で、たまたまこの曲に乗せられたものだけが歴史に残った、ということのようです。詩もメロディに合わせるためか何度も改訂され、ここで紹介するのは1913年の最終版です。
詩はアメリカの文化や歴史に詳しくないとちょっと意味が取れないところが多く、即席で訳すにはかなり無理があるのですが、とりあえず現在できる限りやってみました(意訳と超訳の塊です)。
ひとつだけ補足すると、一節目の「海から輝く海まで」というのは、アメリカがちょうど太平洋から大西洋まで両岸を海に挟まれている、ということを意味しているようです(「アメリカ精神の源」ハロラン芙美子著:中公新書←アメリカにおけるキリスト教の重さを教えてくれる本です)。
他にも何かこの歌についてご存じの方がおられれば教えて頂けると有り難いです。
作曲者のサミュエル・ワード(1847-1903)についてはよく分かりませんが、彼の賛美歌(1882年作曲)がこのアメリカを讃える替え歌として有名になったために現代にまで名を残した、というある意味皮肉な運命の人かも知れません。
ちなみに原曲「Materna」の楽譜はここで見つけました。ご参考まで。エルサレムに帰りたい、といった感じの歌のようですね。
http://lcweb2.loc.gov/cocoon/ihas/loc.natlib.ihas.100010615/
( 2004.10.29 藤井宏行 )