河原柳 |
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南風吹け 麦の穂に 河原柳の 影法師 最早(もはや)今年も 沢潟(おもだか)の 花はちらほら 咲きました 待ちも暮しも したけれど 河原柳の 影法師 山に父母 蔓葛羅(つたかつら) 何故にこの頃 山恋し 藪に茱萸(ぐみ)の木 野に茨 茱萸も茨も 忘れたが 藪に小蔭の 頬白(ほほじろ)は 無事で居たかと 啼きもした 山に二人の 父母は 藪の小蔭の 頬白は 河原柳の 花も見ず 南風吹け 麦の穂に |
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藤井清水は雨情の詩には好んでたくさんの曲を書いていますが、その中でも一番成功したのがこの曲でしょうか。民謡の味わいを生かしながら曲の最後のところでは音階を踏み外して不思議な揺らぎを作っています。詩は朝花夜花(1907)より。この詩はのちに改訂されて何度も別の詩集に載せられており、雨情こだわりの詩だったのでしょうか。
( 2017.01.13 藤井宏行 )