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浅き春に寄せて    
  立原道造による四つの歌
 
    

詩: 立原道造 (Tachihara Michizou,1914-1939) 日本
    優しき歌 I  浅き春に寄せて

曲: 別宮貞雄 (Bekku Sadao,1922-2012) 日本   歌詞言語: 日本語


今は 二月 たつたそれだけ
あたりには もう春がきこえてゐる
だけれども たつたそれだけ
昔むかしの 約束はもうのこらない

今は 二月 たつた一度だけ
夢のなかに ささやいて ひとはゐない
だけれども たつた一度だけ
そのひとは 私のために ほほゑんだ

さう! 花は またひらくであらう
さうして鳥は かはらずに啼いて
人びとは春のなかに笑みかはすであらう

今は 二月 雪の面(おも)につづいた
私の みだれた足跡……それだけ
たつたそれだけ――私には……



外は吹雪でしょうか。雪の舞い散るようなピアノの流れる音に絡み合うように歌が入ってきます。
春の訪れを予感しながらも心はまだ冬の寒さの中で凍り付いている、そんな心象風景が見事に描き出されています。

( 2016.12.31 藤井宏行 )


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