Paying calls Op.2-1 By Footpath and Stile |
訪ね歩き 小道や柵の脇を |
I went by footpath and by stile Beyond where bustle ends, Strayed here a mile and there a mile And called upon some friends. On certain ones I had not seen For years past did I call, And then on others who had been The oldest friends of all. It was the time of midsummer When they had used to roam; But now,though tempting was the air, I found them all at home. I spoke to one and other of them By mound and stone and tree Of things we had done ere days were dim, But they spoke not to me. |
私は歩いた 小道や柵の脇を 喧騒が聞こえなくなるところまで こちらに1マイル あちらに1マイルとさまよい歩き そして訪ねたのだ 幾人かの友人を ずっと会っていない幾人かの人たちのもとを 数年前に私が訪ねたきりの そしてそれから他の人たち ずっと昔から 一番の親友だった人のもとを それは真夏の頃だった 昔なら彼らは歩き回っていたのだ けれど今 大気は外へと誘っていたのに 彼らは皆閉じこもっていたのだ 私は話しかけた 彼らの一人また一人と 土盛りや石や木のそばで ずっと昔に私たちがしたことについて けれど彼らは私に話しかけることはなかった |
フィンジがハーディの詩を取り上げた最初の歌曲集は弦楽四重奏の伴奏がついた6曲からなるもの。ハーディの詩の世界に非常にしっくりとくる美しいものです。残念ながらこの歌曲集が最初で最後の弦楽伴奏となりましたが、その意味でとても貴重な味わいです。歌曲集のタイトルは第1曲目のフレーズから。イギリスでは広く公共に開放されている散歩道のことをFootpathと呼び、農場や牧場の中も通れるようになっているのだそうで、そんな私有地との境目には開け閉めできる柵があり、家畜が逃げ出さないように踏み台(Stile)が設けられているところもあるのだそうです。踏み台と訳すとなんだかよく分からないのでここでは一部の邦訳に従って柵としました。厳密には柵にある出入り口のところですね。
真夏の訪ね歩きですが、日本でいうとお盆のご先祖様参りという趣。冒頭の弦楽の長い前奏からしんみりとしてしまいます。
( 2016.12.16 藤井宏行 )