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Alfonsina y el mar    
  Mujeres Argentinas
アルフォンシーナと海  
     アルヘンティーナの女

詩: ルナ (Félix Luna,1925-2009) アルゼンチン
      

曲: ラミレス (Ariel Ramirez,1921-2010) アルゼンチン   歌詞言語: スペイン語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
 波の洗う白い砂浜の上
 彼女の小さな足跡はもう戻ってこない
 哀しみと沈黙のひとりぼっちの道を通り
       彼女は広い海の底へと旅立った
 声のない苦しみのひとりぼっちの道は
       泡の中へと消えて行った
      ...

 君は行ってしまった、アルフォンシーナ、孤独と一緒に
 今度はどんな新しい詩を 探しに行ったの?

    (詩は大意です)

 古楽のスペシャリストと思われていたソプラノ・波多野睦美さんの素敵な20世紀歌曲集CDのタイトルになったことから、多くのクラシックファンにも名前を知られることになった感のあるラテンの名曲「アルフォンシーナと海」ですが、これはフォルクローレの大歌手メルセデス・ソーサのために書かれた歌曲集「アルゼンチンの女」の一曲です。やはりオリジナルが魂の叫び、というか、大地の底から涌き出てくるような迫力が違いますが(オーマガトキ)、他の多くのラテン系の女性ポップス歌手もレパートリーにしている人気の曲です。
詩は46歳の若さで心や体の病から海に入水自殺をしたアルゼンチンの女性詩人アルフォンシーナ・ストルニ(1892-1938)のことを歌っています。彼女の最後に書いた詩の一節が歌詞に織り込まれているとのことでしたので調べてみました。確かによく似たところはありますがかなり作詞のフェリックス・ルナは内容を変えていることが分かります。この詩、彼女が亡くなった直後に新聞に掲載されたまさに遺作なのだそうで、確かに死を決意した者の語りかけのようにも読めます。
ご参考までにその彼女の詩” Voy a dormir”(私は眠るの)を私のつたない訳でご紹介したあと、該当するルナの書いた歌詞の部分を比較して見ることにしましょう。

  花の歯と 露のヘアネット
  ハーブの手をしてる、あなた、すばらしい乳母は
  大地の毛布を用意してくれるのね
  そして苔むした羽ぶとんを

  わたしは眠るわ、乳母よ、ベッドに置いてね
  ランプをわたしの頭のそばに
  ひとつの星座を、どれでも好きなのでいいから
  どれもみんな素敵だから、でも少し暗くしてね

  わたしを独りにして、つぼみが開くのが聞こえるでしょ
  あなたを揺らすの 天の足が高みの上から
  そして一羽の小鳥があなたにいくつかの調べを歌うでしょう

  それであなたは忘れるの...ありがとう、あ! もうひとつのお願いが
  もし彼がもう一度電話をかけてきても
  もう追いかけないでって言ってね、私は行ってしまったのだから


   Dientes de flores,cofia de rocío,
   manos de hierbas,tú,nodriza fina,
   tenme prestas las sábanas terrosas
   y el edredón de musgos escardados.

   Voy a dormir,nodriza mía,acuéstame.
   Ponme una lámpara a la cabecera;
   una constelación; la que te guste;
   todas son buenas; bájala un poquito.

   Déjame sola: oyes romper los brotes...
   te acuna un pie celeste desde arriba
   y un pájaro te traza unos compases

   para que olvides... Gracias. Ah,un encargo:
   si él llama nuevamente por teléfono
   le dices que no insista,que he salido...

「アルフォンシーナと海」の歌詞ではこんな感じです。6連あるうちの第5連目が彼女の語る言葉になっていますが、日本語に訳してみるとなんとなく似ているように感じられますけれど、スペイン語の方は全くの別物ですね。作詞家ルナのこだわりでしょうか。面白いです。(歌詞のここの部分だけを原詩との比較のために引用させて頂いております)

  ランプの灯りをもう少し弱くして
  私を眠らせてね、乳母よ、平安に
  そしてもし彼が呼んでも 私がいるとは言わないで
  彼に伝えて アルフォンシーナは戻らないと
  そしてもし彼が呼んでも 決しているとは言わないで
  こう言ってね、私は行ってしまったと

   Bájame la lámpara un poco más
   Déjame que duerma,nodriza en paz
   Y si llama él no le digas que estoy
   Dile que Alfonsina no vuelve
   Y si llama él no le digas nunca que estoy
   Di que me he ido

この他の連はアルフォンシーナへの誰か別の人からの呼びかけとなっています。これらも訳して掲載したいのですが著作権のこともあり遠慮させて頂きます。CDのライナーなどをご覧ください。

クラシックの歌手では面白いことに女声のものは少ない一方で、スペイン系のテノールがこぞって録音しています。これらの多くはポップス調に編曲されて、管弦楽の伴奏で景気良く歌われているようです。もともとがソウルフルな歌で、日本の歌手でいうと中島みゆきのような人にとても似合いそうなので、プラシド・ドミンゴやホセ・クーラのようなパワフルな歌唱で聴かせる人のが良いのではないかと思ったのですが、意外とホセ・カレーラスやアルフレッド・クラウスといったリリカルなテノールの歌声の方がこの曲のしんみりとした感じが良く出て、私にはむしろこっちの方が良かったです。

女声では、波多野睦美さんのももちろん素敵なのですが、私は柳貞子さんの録音「アモール・イ・パズ」(Sauce)により惹かれます。しみじみとした歌も素敵ですが、それにも増して伴奏の2本のギター(柴田杏里&永塚節)、この暖かくもやさしい響きに参ってしまったのです。
    T
「アモール・イ・パズ(愛と平和)」、クラシック歌曲やスペインの民謡だけでなく、この歌をはじめ「アマポーラ」や「オルフェの唄」などラテンアメリカを中心とする美しい「うた」をたくさん紹介してくれているとても素敵なCDなので、これからここで何曲か取り上げて見ることにしましょう。
  (これから来週にかけて順次投稿予定です)

( 2004.09.03 藤井宏行 )


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