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Melodia Sentimental   W551  
  A Floresta do Amazonas
メロディア・センティメンタル(感傷的なメロディ)  
     アマゾンの密林

詩: ヴァスコンセロス (Dora Vasconcellos,1910-1973) ブラジル
      

曲: ヴィラ=ロボス (Heitor Villa-Lobos,1887-1959) ブラジル   歌詞言語: ポルトガル語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
目を覚まして 見に来てください 月を
まどろみながら 夜の闇の中
静かに光っている とても美しく白い月を
注いでいるのです 甘美さを
明るい 静かな炎は
燃え立たせるのです 私の夢を

夜の翼が飛び立ち
駆け行くのです この深い空間を
おお 愛しい人 目を覚まして
与えに来てください あなたの暖かさを 月の光の中に

知ることができたなら あなたが私のものだと
この穏やかで静かな時に
影は風を信頼して
じっと待ち続けています
この夜の中に
掻き立てられることを あなたの愛が

目を覚まして 見に来てください 月を
輝いている 夜の闇の中
いとしい人 美しく優しい
感じてください 私の愛と夢とを

    (詩は大意です)


同じ作曲家の「ジャンゴ」のところで話題にした映画「緑の館」の映画音楽をベースに彼が作曲したソプラノソロと合唱付きの管弦楽曲「アマゾンの森林(密林)」の大詰め、今まで自然の描写やインディオたちの戦いの描写(「首狩り」なんて曲もある)で東宝映画「モスラ」の南海の孤島のシーンを思わせる雰囲気が一転して、やるせなくも美しいメロディーと共に、ソプラノソロがこの歌を歌います。
ヴィラ=ロボスの代表作「ブラジル風バッハ第5番:アリア」を思わせるその哀愁ただようメロディは、詩を忘れて聴くとまるで天知茂主演(古い!)の刑事ドラマのテーマ。「犯人が悪いんじゃない。生まれた時代が悪いんだ」とでもナレーションが入りそうな雰囲気ですが、実は詩をよくよく読むとベタベタのラブソングなのでした。
最終曲ではヴォカリーズとなってまた出てきます。

女性から愛をささやきかけるセレナーデ、というのも珍しいかも。

この「アマゾンの密林」、全曲で入手が容易かと思うのは、ルネ・フレミングがソロを歌ったヒラー指揮モスクワ室内管の演奏(Delos)。結構不思議な取り合わせですが、フレミングといえばティルソン・トーマスの指揮ニューワールド響の「ブラジル風バッハ」の演奏でも美しい声を聴かせてくれたヴィラ=ロボスの名解釈者、きっと素敵な歌唱を聴かせてくれることでしょう。ロシアのパワフルなオーケストラも期待度大です。
(実は私は未聴。ロシアつながりではゲラシモワのソプラノ、スヴェトラーノフ指揮の ソヴィエト国立響の演奏という凄まじそうな組み合わせのもあるようです)
また入手は難しいかも知れませんが、EMIにはヴィラ=ロボス指揮シンフォニー・オブ・ジ・エアーの自作自演盤があります。ソロを受け持っているのはブラジルの往年の名ソプラノ、ビドゥ・サーヤオ。ちょっと古めかしい歌唱ではありますが、最晩年のヴィラ=ロボスの熱演もあって見逃せない演奏ではあります。

ピアノ伴奏の歌曲にも編曲されて、ロバータ・アレクサンダーのヴィラ=ロボス歌曲集(ETCETERA)やマリア・ホセ・モンティエルのブラジル歌曲集(Ensayo)などに収録されている録音を聴くことができます。ヴィラ=ロボスの中でも屈指の名旋律ですから彼女たちのような透明な歌声は(詩はベタベタのラブソングにも関わらず)とても映えます。

そういえば波多野睦美さんのギター伴奏による録音もありましたね
      (「アルフォンシーナと海」より)。

メロディーの美しさに惹かれてか、ポピュラー音楽の世界にも取り上げる人が結構いる曲でもあり、そういった編曲で聴かせてくれるのがキャスリーン・バトルのアルバム『SO MANY STARS』にあります。
でも彼女の場合、変な編曲でなく原曲をストレートに聴かせて欲しかった、と私は思いました。Jazz-ボサノバ風のこの曲も決して悪くはないのですけれども、この感じの演奏なら彼女のような清楚なソプラノよりは、スゥイングする女声ジャズシンガーが歌った方がきっともっと素敵なはずです。

( 2004.08.28 藤井宏行 )


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